ひめはじめ
「ツォンから年明けの祝いに貰った」
そう言い見慣れぬ酒の瓶を開けたルーファウスに、みみの顔は青ざめた。この男は酒に強いが、酔うとロクなことがない。年末、無邪気に秘所を掻き回されたことをみみは忌々しげに思い出した。
「そんな顔をするな。せっかくの祝酒だ」
ルーファウスはソファに腰を掛け悠長にそう言った。小さめのカットグラスになみなみそれを注ぐと、スイ、と鼻元にそれを近づける。その仕草は不思議と様になっていて、みみはつい目を奪われてしまう。
「独特の香りだ。穀物から作るらしい」
手招きをされ無視する訳にもいかず、みみは彼の隣に腰掛けた。
ルーファウスの手がシルクのベビードールの上を滑り、腰から尻へと、なだらかな曲線を楽しむ。
「ん…っ」
「どうした?試してみるといい」
思わず甘い声が漏れるのを、ルーファウスが見透かした様な目で見下ろす。みみはなるべく彼と目を合わせない様にしながらグラスを受け取った。
グラスを近づけると、嗅いだことのない酒の香りが鼻腔をつく。試しに一口舐めてみると、芳醇な香りが口いっぱいに広がった。口当たりはまろやかだが、舌に感じるひりひりとした刺激と、焼けつく様な喉の感覚から、相当強い酒なのだと容易に察しがつく。
「俺も貰おう」
ルーファウスはグラスを取り上げるとクイと一口煽った。ふむ、と感心した声を上げると、今度は一気に飲み干す。その姿にみみはぎょっとした。
「ツォンが宴会ではこうして飲むのだと言っていた」
みみは思わずボトルに目をやる。53%と書かれたラベルに目眩がした。
「ま、待って…!」
「ん?」
早くも二杯目を注ごうとする彼の手を制してみみは声を絞り出す。ルーファウスは酒を注ぐ手を止め、代わりにみみの腰を撫でた。
「なんだ」
「そんな飲み方ダメです!」
「一人酒に小言か?」
ルーファウスは目を細めた。まるで一人で飲ませているみみに非があるかの様な口ぶりだった。そして、その表情は数々の女を放蕩の海に沈めてきた男のそれだ。みみはその顔に惑わされないよう、きゅっと唇を引きしばり彼を見上げた。視線で説得できる男ならばどんなに良かっただろう。
「飲み過ぎないで、欲しいだけ…」
でないとあの悪夢が再来してしまう。そう思いながら、みみは声を振り絞った。
「なるほど」
ルーファウスはそう言い、みみの腰を引き寄せる。膝の上に導かれ、みみは脚を跨がせ彼と向かい合わせに腰を落とした。
「では、飲み過ぎない様に調整してくれるか?」
ルーファウスはそう言って、みみの背中越しに二杯目の酒を注いだ。そのグラスを手渡され、腰に両腕を回される。みみは溜息を吐いた。先日の悪夢より幾分かマシだ。そう自分に言い聞かせながら、みみはグラスの酒を口に含み、ルーファウスへと口付けた。
ーー
「ぁ…ぁん…」
粘質な水音はかれこれ半刻ほど続いていた。強いアルコールで痺れた舌をねろねろと舐め取られ、時折吸い上げられる。ルーファウスが舌の裏まですっかりと舐め尽くすと、ようやく唇が離される。蕩けるようなキスでみみの腰はじんじんと痺れていた。
呼吸を整え、またグラスの酒を口に含む。二杯目が終われば三杯目が注がれ、終わりのないキスを強要される。
ルーファウスの唾液と共に何度も酒を飲み下したみみの体は、既に火照りきっていた。シルク越しに腰を撫でる手が、下腹部に不穏な疼きを送ってくる。みみは腰を揺らして抵抗したが、その動きは皮肉にも誘っている様にしか見えなかった。
「…もう、終わり…」
「まだ残っている」
「も…飲みたくないです…」
ルーファウスがさほど酔っていないのは、酒の大半をみみに飲ませているからだろう。狡猾な笑みがみみの潤んだ瞳に映り込んだ。
「そう言うな、みみ」
みみの唇にグラスを押しやり、また一口酒を含ませる。
「むぅ…」
髪を絡ませながら後頭部を掴むと、ルーファウスはまたじゅるじゅると唇を貪り始めた。みみの脚が震え、力ない腕が胸板を押す。
シルク地を押し上げる胸の突起に空いた手を伸ばすと、みみの肩が跳ね上がった。
「あぁっ…ん、く…」
流れ落ちてくる酒に喉を鳴らし、残りを何とかルーファウスへと押しやるが、それを迎え入れる彼の舌がまた絡みつく。乳首の形を確かめる様にするすると這い回るルーファウスの指先に、みみの吐息が震えた。
「もう一口、どうだ?」
再びカットグラスを手にしたルーファウスがそれを見せつけてくる。彼の顔は僅かに紅潮し、普段は隠れている嗜虐的な表情を惜しげもなく晒していた。彼も少しずつ、確実に酔いが回っているようだ。
みみは嫌な予感がしたが、飲まされたアルコールと色気に当てられどうすることも出来なかった。
「いらないっ…」
「なんだ、それともこちらが良いか?」
ルーファウスがぐいとみみの腰を引き寄せると、硬くなった陰茎が恥骨に押し当たり存在を誇示していた。酒を飲んでいるにも関わらず、だ。その質量にみみは驚いた。
「選ばせてやろう」
「うぅ…」
どちらにしても待っているのは同じ結末のように思えてしまう。みみは目に涙を滲ませながら、年末に泥酔していたルーファウスの姿を思い返した。何度絶頂するか試してみようなどと楽しげに語っていたのだ。無垢な残虐さほど恐ろしいものはない。それを思えば、今手を打つ方が多少はましのように思える。
「こっちがいち…」
みみはクイと腰を寄せ、ルーファウスの陰茎に恥部を擦り付けた。その行為の淫猥さに数秒遅れで気付き、顔を真っ赤にする。酒のせいで、まともな思考が出来なくなっている。
「煽り上手だな」
グラスをテーブルに据えると同時に、ルーファウスはみみの首元に齧り付く。甘く甲高い声を上げてみみは身を仰け反らせた。ルーファウスは両腕で腰から背中を支え、座上で喘ぐみみのうなじから耳元へ、ゆっくりと舌を這わせていった。
「はあ、艶かしい…うなじだ…」
ぬるゆると舌の滑る感触にみみの全身が粟立つ。今からこの男に抱かれるのだと本能が悟り、全身が更に熱を帯びた。
「ぁ、あ…」
酒で弛緩した身体はもとより、みみは抵抗する意思を既に手放していた。首を晒すように体を反らせ、だらりと投げ出した腕を時折ぴくぴくと震わせるものの、もう相手の肩を押し除けることもない。
ルーファウスの舌が耳へと到達し、窪みをひとつひとつ確かめるように蠢き始めた。鼓膜を震わせる水音とルーファウスの熱い吐息が、みみの思考を溶かしてゆく。
「みみ…」
「あ…」
脳に蜜を流し込むかの様な声で名前を呼ばれ、みみはうっとりと目を細める。繰り返し刷り込まれた快楽はそれだけで簡単に呼び起こされた。全てあの強い酒のせいだ。みみはそう思うことにした。そう思えば後は身を委ねるだけなのだから。
ルーファウスは気を良くして乳房をやわやわと揉み始めた。シルクで覆われた胸が手の中で形を変える。
「ここを捏ねられてどんな気分だ?」
すっかり勃ち上がり布地を押し上げている乳首を、指先でくるくると撫で回される。みみはそれだけで呼吸を乱しながらルーファウスを見つめた。
「ぁっあ…きもち、いいです…」
「ん、素直でいい子だ」
指で転がす様に刺激され、背中が自然と仰反る。優しくてねちっこい愛撫に、みみの秘裂はすっかり濡れそぼっていた。足を擦り合わせることも出来ず、ぎゅっと太ももに力を込めると、それに気付いたルーファウスがふっと笑みを漏らす。
「どうした?」
「はぁ…あん…」
顎をくすぐられ、みみは堪らず腰を揺らす。硬い陰茎に秘部をぐいぐいと押し当て、その先を強請った。
「誘うのが上手くなったな…」
ルーファウスがそう言い下腹部に目配せをすると、みみは言われるでもなくベルトに手をかけスラックスを寛がせた。下着の上からでも形の分かる陰茎に、みみはゴクリと喉を鳴らす。
「ふ…飲み過ぎず正解だったな」
下着に手をかけ引き下ろすと、勃起したペニスがゆらりと立ち上がる。みみの息が興奮で浅くなるのを見留め、ルーファウスはほくそ笑んだ。
「腰を浮かせてみろ、みみ」
みみはベビードールの裾を摘み上げ、開脚した秘所を晒した。初めからショーツを纏っていなかったそこは、愛液でぐっしょりと濡れ光り、何本も透明な糸を垂らしていた。
「酷い有り様だ」
愉快そうな声を上げ、ルーファウスはそれを見下ろす。興奮の熱で意識を朦朧とさせたみみの耳に、その皮肉は届かなかった。代わりに腰を揺らし、そそり立つペニスの先にズリズリと秘裂を擦り付ける。
「ゆっくり腰を落とせ」
「はい…っ」
愛液でぬるついた秘裂に、ペニスの先を押し込む。裾を握り締める手に力が入った。既に数え切れないほど受け入れてきた雄を、蜜壺は素直に咥え込んでゆく。
「あぁ…ん…」
「はぁ…すごいな…しっかり奥まで入れろ…」
みみは尻を震わせながら、張り詰めた陰茎を最奥まで挿入した。ルーファウスの手が尻を支え腰を前後に揺すると、亀頭が奥の弱い場所を掠め、みみの口から甘い声が上がる。
「熱くて…蕩けそうだな…良く絡みつく。濡れ易いのもいい。時折濡れ過ぎるのは考えものだがな」
長い吐息を漏らし、ルーファウスはソファの背もたれに体重を預ける。
みみの何か言いたげな表情を察すると、ベビードールの裾を持ち上げ、彼女の口に噛ませてやった。
「褒めているんだ。そう睨むな」
「うぅん…」
クイ、と腰を揺らせばくぐもった声が上がる。そのままトントンと何度か下から突き上げてやると、みみの体がその動きに合わせて震えた。みみは眉を寄せ喘ぎ声の代わりにふぅふぅと荒い息を漏らす。
「口枷も中々そそられるな。今度作らせようか」
「んンッ…」
「あぁ…触って貰えず可哀想なクリトリスも可愛がってやろう」
みみは酒で饒舌になるこの男の口を塞ぎたくなった。だがルーファウスの指が肉芽に触れると、そんな考えも瞬時に消え去ってしまう。体に電流が走り、意思にかかわらずペニスを締め上げた。
「はは、いいぞ。中が良く締まる」
ほろ酔いのルーファウスは面白がってクリトリスを執拗に責め始めた。恐れていた悪夢の再来を予感し、みみは背中を強張らせる。
その責めから逃れようと腰を引いてみたところで、ルーファウスの指がそれを追いかけてくる。みみはベビードールを噛み締めながら腰を上下に揺らし始めた。クリトリスを捏ね回されるよりかは幾分かましだった。
「んっ、ううっ…」
「積極的だな。出し入れしているところが良く見える」
ルーファウスは肉芽に触れるのを諦め、みみの太腿を撫で始めた。涙を浮かべ必死に腰を振るみみとは対照的な、なんとも優雅な風情だ。
ベビードールの裾を咥えたままのみみはくぐもった喘ぎ声を上げることしかできず、ぐちゃぐちゃと激しい水音がやけに大きく響き渡る。
「い、ィうっ…」
みみに限界が訪れるのに、そう時間は掛からなかった。健気に裾を噛み締めたまま背中を仰け反らせ、みみは絶頂を知らせた。
ルーファウスはそれ以上みみが動く気配がないことを悟ると、上体を起こしティファの尻を両側からグイと持ち上げてやる。
「世話が焼けるな。主人がイくまで腰を止めるなと教えただろう」
そう言い尻をゆさゆさと上下に揺さぶり、絶頂を迎えたばかりの蜜壺でペニスを扱く。緊縮した膣壁をごりごりと擦り上げられ、みみはついに咥えていたベビードールの裾をはらりと落として大きな喘ぎ声を上げ始めた。
「あぁぁんやっ、だぁ…!」
「く…はあ、よく締まる…っみみ…」
舌舐めずりをして自分を見つめるルーファウスにみみの雌の本能が呼び起こされる。美しい双眸は嗜虐的な色気をたっぷりと孕み、命じられるだけで何度でも果ててしまいそうだ。目を逸らす事も出来ず、みみは涙の滲む視界でルーファウスを見つめた。
「自分で動けるな?」
穏やかだが拒絶を許さない声色に、みみは震えた。自分に出来る事は喘ぐことと腰を揺らすことだけなのだ。頭に回ったアルコールは理性を蝕み、残された浅ましい体をみみは懸命に動かした。
「はぁ…淫な体だ…どう動けば良いのか、よく分かっている、なっ…」
「ぁっ…すごいの、ご主人さま…きもち、いっ…」
自分で快楽を貪るみみの姿は堪らなく煽情的だ。ルーファウスはそこから片時も目を離さずにゆさゆさと腰を揺らし続ける。射精感が高まるが、程よく回ったアルコールのせいか中々絶頂には至らない。これはいい、とルーファウスは笑った。
「酒のお陰で長持ちしそうだ」
「むり、いく、いく…」
そう言いながらも卑しい腰の動きでみみは絶頂へとのぼりつめていく。
「はあ、は、いいぞ…」
ルーファウスはベビードールをたくし上げ、振り上げた手を強く振り下ろした。バチン、と大きな音を響かせてみみの小さな尻が波打つ。その強烈な刺激が一押しとなって、みみは再び絶頂を迎えた。
「いっちゃ、あああっ!」
「っはは、叩かれてイったのか…」
ルーファウスの屈託のない笑い声にみみは涙を溢した。
「舌を寄越せ」
「あぇ…」
ルーファウスの胸板に身を預け震わせた舌を突き出す。果てたばかりだと言うのに彼の腰の動きは止まらず、みみは内臓を抉る鈍い刺激と生温かい舌の感触を同時に味わった。そこに容赦なく振り下ろされる手の平に、みみの視界はチカチカと火花を散らす。同時に与えられる全く違う性質の刺激に、みみは意識を朦朧とさせながら必死に舌を貪った。
「じゅる…っん…ゔッ…」
ルーファウスが手を振り下ろす度、刺すような痛みにみみの腰が引き攣ったように震える。それに合わせてぎゅうぎゅうと締め上げる膣に、ルーファウスをは舌を絡ませながらくつくつと喉を鳴らした。
三度目の絶頂もそう遠くない。今日こそみみが何度果てるか数えてみるのもいいな、とルーファウスは心の中で独りごちた。
ーーー
静まり返った部屋の中で、二人はソファの上で繋がり合ったまま、暫く目を閉じていた。結合部で白く泡立った愛液が二人の行為の激しさを物語っている。
みみはあの後、意識を飛ばすまで何度もルーファウスの座上で絶頂した。最後は弛緩した体を下から容赦なく突き上げられ、彼の胸の上で壊れた人形のように揺れながら殆ど消え入るような喘ぎ声を上げているのを、ルーファウスは愛おしくて堪らないといった様子で眺めつつラストスパートを掛けたのだ。
じっとりと汗ばんだみみの後頭部を撫でながら、ルーファウスはある記憶を辿っていた。ツォンから、彼の言う正月文化とやらを教わっていた時のことだ。
「…あぁ、やっと思い出した。これはヒメハジメ、と言うんだったな。」
先程から探していた言葉をようやく思い出す。ルーファウスは静かに微笑むと、意識を失ったみみの額にキスを落とした。
そう言い見慣れぬ酒の瓶を開けたルーファウスに、みみの顔は青ざめた。この男は酒に強いが、酔うとロクなことがない。年末、無邪気に秘所を掻き回されたことをみみは忌々しげに思い出した。
「そんな顔をするな。せっかくの祝酒だ」
ルーファウスはソファに腰を掛け悠長にそう言った。小さめのカットグラスになみなみそれを注ぐと、スイ、と鼻元にそれを近づける。その仕草は不思議と様になっていて、みみはつい目を奪われてしまう。
「独特の香りだ。穀物から作るらしい」
手招きをされ無視する訳にもいかず、みみは彼の隣に腰掛けた。
ルーファウスの手がシルクのベビードールの上を滑り、腰から尻へと、なだらかな曲線を楽しむ。
「ん…っ」
「どうした?試してみるといい」
思わず甘い声が漏れるのを、ルーファウスが見透かした様な目で見下ろす。みみはなるべく彼と目を合わせない様にしながらグラスを受け取った。
グラスを近づけると、嗅いだことのない酒の香りが鼻腔をつく。試しに一口舐めてみると、芳醇な香りが口いっぱいに広がった。口当たりはまろやかだが、舌に感じるひりひりとした刺激と、焼けつく様な喉の感覚から、相当強い酒なのだと容易に察しがつく。
「俺も貰おう」
ルーファウスはグラスを取り上げるとクイと一口煽った。ふむ、と感心した声を上げると、今度は一気に飲み干す。その姿にみみはぎょっとした。
「ツォンが宴会ではこうして飲むのだと言っていた」
みみは思わずボトルに目をやる。53%と書かれたラベルに目眩がした。
「ま、待って…!」
「ん?」
早くも二杯目を注ごうとする彼の手を制してみみは声を絞り出す。ルーファウスは酒を注ぐ手を止め、代わりにみみの腰を撫でた。
「なんだ」
「そんな飲み方ダメです!」
「一人酒に小言か?」
ルーファウスは目を細めた。まるで一人で飲ませているみみに非があるかの様な口ぶりだった。そして、その表情は数々の女を放蕩の海に沈めてきた男のそれだ。みみはその顔に惑わされないよう、きゅっと唇を引きしばり彼を見上げた。視線で説得できる男ならばどんなに良かっただろう。
「飲み過ぎないで、欲しいだけ…」
でないとあの悪夢が再来してしまう。そう思いながら、みみは声を振り絞った。
「なるほど」
ルーファウスはそう言い、みみの腰を引き寄せる。膝の上に導かれ、みみは脚を跨がせ彼と向かい合わせに腰を落とした。
「では、飲み過ぎない様に調整してくれるか?」
ルーファウスはそう言って、みみの背中越しに二杯目の酒を注いだ。そのグラスを手渡され、腰に両腕を回される。みみは溜息を吐いた。先日の悪夢より幾分かマシだ。そう自分に言い聞かせながら、みみはグラスの酒を口に含み、ルーファウスへと口付けた。
ーー
「ぁ…ぁん…」
粘質な水音はかれこれ半刻ほど続いていた。強いアルコールで痺れた舌をねろねろと舐め取られ、時折吸い上げられる。ルーファウスが舌の裏まですっかりと舐め尽くすと、ようやく唇が離される。蕩けるようなキスでみみの腰はじんじんと痺れていた。
呼吸を整え、またグラスの酒を口に含む。二杯目が終われば三杯目が注がれ、終わりのないキスを強要される。
ルーファウスの唾液と共に何度も酒を飲み下したみみの体は、既に火照りきっていた。シルク越しに腰を撫でる手が、下腹部に不穏な疼きを送ってくる。みみは腰を揺らして抵抗したが、その動きは皮肉にも誘っている様にしか見えなかった。
「…もう、終わり…」
「まだ残っている」
「も…飲みたくないです…」
ルーファウスがさほど酔っていないのは、酒の大半をみみに飲ませているからだろう。狡猾な笑みがみみの潤んだ瞳に映り込んだ。
「そう言うな、みみ」
みみの唇にグラスを押しやり、また一口酒を含ませる。
「むぅ…」
髪を絡ませながら後頭部を掴むと、ルーファウスはまたじゅるじゅると唇を貪り始めた。みみの脚が震え、力ない腕が胸板を押す。
シルク地を押し上げる胸の突起に空いた手を伸ばすと、みみの肩が跳ね上がった。
「あぁっ…ん、く…」
流れ落ちてくる酒に喉を鳴らし、残りを何とかルーファウスへと押しやるが、それを迎え入れる彼の舌がまた絡みつく。乳首の形を確かめる様にするすると這い回るルーファウスの指先に、みみの吐息が震えた。
「もう一口、どうだ?」
再びカットグラスを手にしたルーファウスがそれを見せつけてくる。彼の顔は僅かに紅潮し、普段は隠れている嗜虐的な表情を惜しげもなく晒していた。彼も少しずつ、確実に酔いが回っているようだ。
みみは嫌な予感がしたが、飲まされたアルコールと色気に当てられどうすることも出来なかった。
「いらないっ…」
「なんだ、それともこちらが良いか?」
ルーファウスがぐいとみみの腰を引き寄せると、硬くなった陰茎が恥骨に押し当たり存在を誇示していた。酒を飲んでいるにも関わらず、だ。その質量にみみは驚いた。
「選ばせてやろう」
「うぅ…」
どちらにしても待っているのは同じ結末のように思えてしまう。みみは目に涙を滲ませながら、年末に泥酔していたルーファウスの姿を思い返した。何度絶頂するか試してみようなどと楽しげに語っていたのだ。無垢な残虐さほど恐ろしいものはない。それを思えば、今手を打つ方が多少はましのように思える。
「こっちがいち…」
みみはクイと腰を寄せ、ルーファウスの陰茎に恥部を擦り付けた。その行為の淫猥さに数秒遅れで気付き、顔を真っ赤にする。酒のせいで、まともな思考が出来なくなっている。
「煽り上手だな」
グラスをテーブルに据えると同時に、ルーファウスはみみの首元に齧り付く。甘く甲高い声を上げてみみは身を仰け反らせた。ルーファウスは両腕で腰から背中を支え、座上で喘ぐみみのうなじから耳元へ、ゆっくりと舌を這わせていった。
「はあ、艶かしい…うなじだ…」
ぬるゆると舌の滑る感触にみみの全身が粟立つ。今からこの男に抱かれるのだと本能が悟り、全身が更に熱を帯びた。
「ぁ、あ…」
酒で弛緩した身体はもとより、みみは抵抗する意思を既に手放していた。首を晒すように体を反らせ、だらりと投げ出した腕を時折ぴくぴくと震わせるものの、もう相手の肩を押し除けることもない。
ルーファウスの舌が耳へと到達し、窪みをひとつひとつ確かめるように蠢き始めた。鼓膜を震わせる水音とルーファウスの熱い吐息が、みみの思考を溶かしてゆく。
「みみ…」
「あ…」
脳に蜜を流し込むかの様な声で名前を呼ばれ、みみはうっとりと目を細める。繰り返し刷り込まれた快楽はそれだけで簡単に呼び起こされた。全てあの強い酒のせいだ。みみはそう思うことにした。そう思えば後は身を委ねるだけなのだから。
ルーファウスは気を良くして乳房をやわやわと揉み始めた。シルクで覆われた胸が手の中で形を変える。
「ここを捏ねられてどんな気分だ?」
すっかり勃ち上がり布地を押し上げている乳首を、指先でくるくると撫で回される。みみはそれだけで呼吸を乱しながらルーファウスを見つめた。
「ぁっあ…きもち、いいです…」
「ん、素直でいい子だ」
指で転がす様に刺激され、背中が自然と仰反る。優しくてねちっこい愛撫に、みみの秘裂はすっかり濡れそぼっていた。足を擦り合わせることも出来ず、ぎゅっと太ももに力を込めると、それに気付いたルーファウスがふっと笑みを漏らす。
「どうした?」
「はぁ…あん…」
顎をくすぐられ、みみは堪らず腰を揺らす。硬い陰茎に秘部をぐいぐいと押し当て、その先を強請った。
「誘うのが上手くなったな…」
ルーファウスがそう言い下腹部に目配せをすると、みみは言われるでもなくベルトに手をかけスラックスを寛がせた。下着の上からでも形の分かる陰茎に、みみはゴクリと喉を鳴らす。
「ふ…飲み過ぎず正解だったな」
下着に手をかけ引き下ろすと、勃起したペニスがゆらりと立ち上がる。みみの息が興奮で浅くなるのを見留め、ルーファウスはほくそ笑んだ。
「腰を浮かせてみろ、みみ」
みみはベビードールの裾を摘み上げ、開脚した秘所を晒した。初めからショーツを纏っていなかったそこは、愛液でぐっしょりと濡れ光り、何本も透明な糸を垂らしていた。
「酷い有り様だ」
愉快そうな声を上げ、ルーファウスはそれを見下ろす。興奮の熱で意識を朦朧とさせたみみの耳に、その皮肉は届かなかった。代わりに腰を揺らし、そそり立つペニスの先にズリズリと秘裂を擦り付ける。
「ゆっくり腰を落とせ」
「はい…っ」
愛液でぬるついた秘裂に、ペニスの先を押し込む。裾を握り締める手に力が入った。既に数え切れないほど受け入れてきた雄を、蜜壺は素直に咥え込んでゆく。
「あぁ…ん…」
「はぁ…すごいな…しっかり奥まで入れろ…」
みみは尻を震わせながら、張り詰めた陰茎を最奥まで挿入した。ルーファウスの手が尻を支え腰を前後に揺すると、亀頭が奥の弱い場所を掠め、みみの口から甘い声が上がる。
「熱くて…蕩けそうだな…良く絡みつく。濡れ易いのもいい。時折濡れ過ぎるのは考えものだがな」
長い吐息を漏らし、ルーファウスはソファの背もたれに体重を預ける。
みみの何か言いたげな表情を察すると、ベビードールの裾を持ち上げ、彼女の口に噛ませてやった。
「褒めているんだ。そう睨むな」
「うぅん…」
クイ、と腰を揺らせばくぐもった声が上がる。そのままトントンと何度か下から突き上げてやると、みみの体がその動きに合わせて震えた。みみは眉を寄せ喘ぎ声の代わりにふぅふぅと荒い息を漏らす。
「口枷も中々そそられるな。今度作らせようか」
「んンッ…」
「あぁ…触って貰えず可哀想なクリトリスも可愛がってやろう」
みみは酒で饒舌になるこの男の口を塞ぎたくなった。だがルーファウスの指が肉芽に触れると、そんな考えも瞬時に消え去ってしまう。体に電流が走り、意思にかかわらずペニスを締め上げた。
「はは、いいぞ。中が良く締まる」
ほろ酔いのルーファウスは面白がってクリトリスを執拗に責め始めた。恐れていた悪夢の再来を予感し、みみは背中を強張らせる。
その責めから逃れようと腰を引いてみたところで、ルーファウスの指がそれを追いかけてくる。みみはベビードールを噛み締めながら腰を上下に揺らし始めた。クリトリスを捏ね回されるよりかは幾分かましだった。
「んっ、ううっ…」
「積極的だな。出し入れしているところが良く見える」
ルーファウスは肉芽に触れるのを諦め、みみの太腿を撫で始めた。涙を浮かべ必死に腰を振るみみとは対照的な、なんとも優雅な風情だ。
ベビードールの裾を咥えたままのみみはくぐもった喘ぎ声を上げることしかできず、ぐちゃぐちゃと激しい水音がやけに大きく響き渡る。
「い、ィうっ…」
みみに限界が訪れるのに、そう時間は掛からなかった。健気に裾を噛み締めたまま背中を仰け反らせ、みみは絶頂を知らせた。
ルーファウスはそれ以上みみが動く気配がないことを悟ると、上体を起こしティファの尻を両側からグイと持ち上げてやる。
「世話が焼けるな。主人がイくまで腰を止めるなと教えただろう」
そう言い尻をゆさゆさと上下に揺さぶり、絶頂を迎えたばかりの蜜壺でペニスを扱く。緊縮した膣壁をごりごりと擦り上げられ、みみはついに咥えていたベビードールの裾をはらりと落として大きな喘ぎ声を上げ始めた。
「あぁぁんやっ、だぁ…!」
「く…はあ、よく締まる…っみみ…」
舌舐めずりをして自分を見つめるルーファウスにみみの雌の本能が呼び起こされる。美しい双眸は嗜虐的な色気をたっぷりと孕み、命じられるだけで何度でも果ててしまいそうだ。目を逸らす事も出来ず、みみは涙の滲む視界でルーファウスを見つめた。
「自分で動けるな?」
穏やかだが拒絶を許さない声色に、みみは震えた。自分に出来る事は喘ぐことと腰を揺らすことだけなのだ。頭に回ったアルコールは理性を蝕み、残された浅ましい体をみみは懸命に動かした。
「はぁ…淫な体だ…どう動けば良いのか、よく分かっている、なっ…」
「ぁっ…すごいの、ご主人さま…きもち、いっ…」
自分で快楽を貪るみみの姿は堪らなく煽情的だ。ルーファウスはそこから片時も目を離さずにゆさゆさと腰を揺らし続ける。射精感が高まるが、程よく回ったアルコールのせいか中々絶頂には至らない。これはいい、とルーファウスは笑った。
「酒のお陰で長持ちしそうだ」
「むり、いく、いく…」
そう言いながらも卑しい腰の動きでみみは絶頂へとのぼりつめていく。
「はあ、は、いいぞ…」
ルーファウスはベビードールをたくし上げ、振り上げた手を強く振り下ろした。バチン、と大きな音を響かせてみみの小さな尻が波打つ。その強烈な刺激が一押しとなって、みみは再び絶頂を迎えた。
「いっちゃ、あああっ!」
「っはは、叩かれてイったのか…」
ルーファウスの屈託のない笑い声にみみは涙を溢した。
「舌を寄越せ」
「あぇ…」
ルーファウスの胸板に身を預け震わせた舌を突き出す。果てたばかりだと言うのに彼の腰の動きは止まらず、みみは内臓を抉る鈍い刺激と生温かい舌の感触を同時に味わった。そこに容赦なく振り下ろされる手の平に、みみの視界はチカチカと火花を散らす。同時に与えられる全く違う性質の刺激に、みみは意識を朦朧とさせながら必死に舌を貪った。
「じゅる…っん…ゔッ…」
ルーファウスが手を振り下ろす度、刺すような痛みにみみの腰が引き攣ったように震える。それに合わせてぎゅうぎゅうと締め上げる膣に、ルーファウスをは舌を絡ませながらくつくつと喉を鳴らした。
三度目の絶頂もそう遠くない。今日こそみみが何度果てるか数えてみるのもいいな、とルーファウスは心の中で独りごちた。
ーーー
静まり返った部屋の中で、二人はソファの上で繋がり合ったまま、暫く目を閉じていた。結合部で白く泡立った愛液が二人の行為の激しさを物語っている。
みみはあの後、意識を飛ばすまで何度もルーファウスの座上で絶頂した。最後は弛緩した体を下から容赦なく突き上げられ、彼の胸の上で壊れた人形のように揺れながら殆ど消え入るような喘ぎ声を上げているのを、ルーファウスは愛おしくて堪らないといった様子で眺めつつラストスパートを掛けたのだ。
じっとりと汗ばんだみみの後頭部を撫でながら、ルーファウスはある記憶を辿っていた。ツォンから、彼の言う正月文化とやらを教わっていた時のことだ。
「…あぁ、やっと思い出した。これはヒメハジメ、と言うんだったな。」
先程から探していた言葉をようやく思い出す。ルーファウスは静かに微笑むと、意識を失ったみみの額にキスを落とした。