「ひゃん、あ、ま、待って」
「ん? どうした、みみ」

 必死でルーの腕にしがみ付くと、ルーは動きを止めて私の顔を覗き込んだ。身体を蝕むような快感から意識を逸らすように深呼吸をして、上がった息を整える。ぎゅ、と目を瞑ると、目尻からほろりと涙が零れた。
 ルーが初めての男というわけではない。それなりの数の恋愛もしたし、肌を重ねた男性もいた。遊んでいたわけではないが、固く貞操を守っていたわけでもない。もう少女ではないのだから、ある程度のことは経験してきたけれど、でも、こんな、こんなこと、私は、知らない。

「みみ……?」
「あ、る、ぅ、待って、お願い、んぅ、」
「待っているだろう。どうした?」

 優しく囁いたルーが、ぐっと顔を寄せて私の涙を舐めた。その拍子に、中に埋められたそれの角度が変わる。ぐい、と壁を擦られて、ぞわぞわとした感覚が腰のあたりから全身へと広がった。力の入らない唇から、甘ったるい声が飛び出す。媚びているつもりなんて全然ないのに、それはまるでルーを誘っているみたいだった。

「ひ、あぁぁああんっ!」
「ここがいいのか?」
「あっ、そこ、ん、あぁぁっ!」

 じゅぷり、ルーが先端でそこを擦り上げるたび、私の奥からどんどん蜜が溢れてくる。どうしよう、シーツ、もうびしゃびしゃかもしれない。ルーはゆっくり動いているだけなのに、私ばかり呼吸が上がって、気持ち良すぎて、頭の芯がじんじんする。息も絶え絶えな私を見下ろして、ルーがにやりと唇を歪めた。その色気に、きゅんと中を締め付けてしまう。私、どうしちゃったの、こんなの、本当に、知らなくて、

「ルー、ひゃあんっ、あ、あぁっ」
「なんだ?」
「あ、わかんない、私、あぁっ、こんなの、初めてで、」
「こんなの?」
「こんなに、ふぁ、気持ちいの、あ、や、ルー、イっちゃう……っ!!」

 電撃みたいな快感が、身体の中で燻って、大きくなって、勢いよく弾けた。波のようにやってきたそれに抗うことなんてできなくて、ルーに抱きついたまま思い切り達してしまう。脚がびくびくと震えて、中をぎゅうぎゅうと締め付けてしまって。ん、と色っぽい声を出したルーが、一瞬動きを止めてから息を吐き出す。そして、はくはくと酸素を求める唇に優しく吸い付いてきた。

「ん、んぅう、はぁっ、ルー、」
「はぁ、みみ、かわいいな、お前は」
「ひゃ、待って、今、イったばっかり、っふぁ!」
「だが、今、誰を思い出した?」
「あぁぁんっ!」

 ずちゅん、とルーの硬いそれが奥へと突き立てられた。あまりの快感に、目の前がぱちぱちする。誰を思い出した、なんて、そんなのあるはずがない。こんなの、初めてで、知らない。ルーしか知らないし、ルーしかわからない。そう伝えたいのに、ごちゅごちゅと奥ばかり突き上げられて甘い声しか出すことができない。私を抱き竦めていたルーの右手が、するりと脇腹をなぞって脚の付け根を撫でた。ああ、だめ、そこは、

「ひゃああっ、ルー、あっ、るぅ、っ!」
「みみ、これが俺だ。お前はこれから、俺だけを覚えて、俺だけに感じていればいい」
「ひぅ、あっ、ルー、好き、ルーだけ、ひゃあんっ」

 ぐりぐりと腫れた突起を擦られて、奥ばかり強引に暴かれて、限界はすぐそこまで迫っていた。激しく腰を打ち付けるルーの眉間にきゅっと皺が寄る。余裕のなさそうな表情、ぽたり、とこめかみから流れた汗が私の頬に落ちた。

「ルー、好き、あぁっ、一緒が、いい、っんん!」
「っ、お前は……っ! はあ、みみ、愛してる、」
「んぁあっ、私も、愛して、あっ、あぁぁあああっ!!」
「ぐ、……っ!!」

 痛いくらいにルーに抱きしめられながら、私は再び絶頂を迎えた。一際大きく奥を突き上げてから、ルーが息を詰まらせる。中でびくびくと脈打つそれを感じながら、ゆっくりと目蓋を閉じる。身体に力が入らない。襲いくる睡魔に抵抗なんてできなくて、私は小さく息を吐いた。「みみ、愛してる――もう、離さない」ルーがなにか囁いたけれど、私の意識は完全に沈んでしまった。



210112