冷たい雨がコスタ・デル・ソルの石畳を打つ音が、窓辺で膝を抱えるみみの耳に遠く響いていた。高級リゾート地の一室で過ごす日々は、誰もが羨む贅沢そのものだ。しかし、そこに満たされるべき心の空虚さを補えるものは何一つなかった。

「みみ、君はここにいればいい。あいつが解放されるまで。」

神羅カンパニーの重役にそう言われ、半ば強制的に送り込まれたこのアパートは、目に映る全てが絢爛で整然としている。けれども、そこに彼の影はなかった。

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一方、ミッドガルのどこか。冷たい金属の壁に囲まれた部屋の中で、ルーファウス神羅は窓もない天井を見上げていた。
「軟禁」とは名ばかりの政治的策略により、彼は父の命令でその自由を奪われている。彼のカリスマ性を恐れたプレジデント神羅が、社内外の不安定な状況を抑えるために選んだ手段だった。

みみは元気でいるだろうか。

その問いが脳裏を過るたびに、彼の胸の奥底には焦燥と怒りが渦巻いた。秘書であり、そしてそれ以上の存在でもある彼女を、自分のそばに置けない無力感が嫌だった。それ以上に、彼女が孤独に苛まれている姿を想像することが何よりも堪え難い。

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時折手元に届けられる極秘の報告書には、みみの平穏な生活が記されていた。だが、それだけでは満たされなかった。報告書の行間に潜む彼女の感情や、涙で濡れた頬を見ることはできない。ルーファウスは机に拳を叩きつけ、密かに誓った。

待っていろ。お前を迎えに行く。

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その約束の時は、嵐のように訪れた。
軟禁が解かれた翌日、彼は一切の予定をキャンセルし、コスタ・デル・ソルへ向かう準備を進めた。誰にも知らせず、一人で向かうという判断にタークスたちは驚きを隠せなかったが、彼の意思の強さに逆らう者はいなかった。

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みみのアパートの扉が叩かれたのは、冷たい風がまだ街を吹き抜ける早朝だった。

「誰……?」

薄いガウンを羽織りながら恐る恐る扉を開けると、そこにはずぶ濡れになりながらも堂々と立つルーファウスの姿があった。

「ルー……!」

その名を呼んだ瞬間、みみは堰を切ったように泣き崩れた。彼の濡れたコートにすがりつきながら、離れていた日々の孤独をすべて吐き出すように泣きじゃくった。

「待たせたな、みみ。」

ルーファウスの低い声が耳元に届くと、彼女は顔を上げた。冷たい雨に濡れた金髪が額に貼りついていたが、その蒼い瞳は以前よりもさらに強い光を宿していた。

「お前を一人にしたことを悔いている。だが、もう大丈夫だ。これからはずっとそばにいる。」

その言葉にみみは再び涙を流したが、今度は安心の涙だった。


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その後、二人はリゾート地の海を見下ろすカフェで静かに過ごした。ルーファウスはみみの手をしっかりと握り、ただ無言でその温もりを感じていた。

「ルー、本当に戻ってきてくれてありがとう。」

彼女の声には、喜びと少しの不安が混じっていたが、彼の手の力強さがそのすべてを包み込んだ。

「お前を誰にも触れさせない。それが俺の仕事だ。」

ルーファウスのその言葉は、彼女にとって最上の約束だった。

コスタ・デル・ソルの朝陽が二人の肩を照らし、失われた日々の距離を溶かしていく。