薄暗い廊下の隅に立つ若い男は、パーティーの喧騒から切り離された静けさの中で、控え室の扉をじっと見つめていた。
彼は名の知れた一族の御曹司であり、その地位と見た目の良さから女性たちの注目を集める存在だった。しかし、彼の視線の先にあるのは、パーティー会場の華やかな女性たちではなく、一人の控えめな秘書だった。

みみ――あの清楚で穏やかな女性が、自分の心を掴んで離さない。初めて会ったときから、彼女が誰の目にも留められず、影のように働いている姿に、不思議な魅力を感じていた。彼女の控えめな笑顔、ルーファウス社長に向ける特別な眼差し――その全てが、彼の心をざわつかせていた。

彼女は自分のものになるべきだと、彼は密かに思い続けていた。自分なら、あんな厳格で冷たいルーファウスよりも、彼女を幸せにできるはずだと。

控え室の扉の隙間から、彼はその二人の姿を見た。酔って顔を赤らめたみみがソファに座り、ルーファウスがその横に膝をついて優しく肩を抱いている。

「お前、飲みすぎだ。」
ルーファウスの声は、低く落ち着いていて、それでいてどこか優しさが滲んでいる。

「だって、ルーが…冷たいから…」
みみの掠れた声が彼の耳に届き、拳を握る力が強くなった。

「馬鹿だな。お前以外に誰がいる。」
そう言いながら、ルーファウスが彼女の髪に手を差し入れる。その仕草に、御曹司は胸の奥が鋭く痛むのを感じた。

「ルーファウス社長があんな表情をするなんて…」
呟く声には嫉妬が混じっていた。冷徹で完璧な彼が、自分の知らないほど温かい目を向けている。その相手が、他ならぬみみであることに、どうしても耐えられなかった。

「こんな男じゃなく、俺なら…」
彼の呟きは、隠しきれない渇望に満ちていた。

扉の向こうでは、ルーファウスがみみの頬にそっと触れ、額を重ねるようにして低く囁いていた。
「これ以上、俺を嫉妬させるな。」

その言葉に、御曹司の拳は震えた。自分が今感じているこの嫉妬の苦しみを、あの冷酷なルーファウスが感じていると言うのか?彼がこの女性をそんなに愛しているというのか?

控え室の中では、二人の世界が完全に閉じられていた。ルーファウスの指先がみみの頬を伝い、彼女の唇に触れようとしている。御曹司は、見ていられなくなり、その場を離れた。

しかし、廊下を歩きながら、彼は新たな決意を胸に秘めていた。
「みみさん、あなたは俺のものになるべきだ。必ず、俺が手に入れてみせる。」

彼の瞳には執念が宿り、その感情がさらなる行動を促そうとしていた。