タブロイド紙を持つみみの手が、怒りでわずかに震えていた。
「社長、これ…どういうことですか?」

彼女の目にはいつもの冷静さはなく、普段見せない感情があらわになっている。
ルーファウスは机の向こう側からゆったりとした動きで立ち上がり、みみの前に立った。

「どういうことも何も、見ての通りガセだ。」
彼は無造作にみみの手からタブロイド紙を取り、机の上に放り投げた。その動作はどこか楽しげで、意外にもみみを落ち着かせるどころか怒りを煽った。

「社長、それで済む話じゃありません!あんな記事が出回ったら、社内だって変な噂になりますし…何より…」

言葉を詰まらせるみみを見て、ルーファウスの口元にわずかな笑みが浮かぶ。その様子にみみはさらに苛立ちを感じた。

「…何がそんなにおかしいんですか?」
彼を睨みつける彼女の瞳は赤く潤み始めている。

ルーファウスは首を軽く振りながら答えた。
「おかしいわけじゃない。ただ…滅多に嫉妬なんてしないお前が、そんなに感情的になるのが新鮮だっただけだ。」

その言葉に、みみの頬がみるみる赤く染まった。
「…嫉妬なんてしてません!」
思わず反論したが、自分の声が震えていることに気づいて、みみはさらに恥ずかしくなった。

ルーファウスは彼女の目線を外さないまま、一歩近づいた。
「嫉妬じゃない、か。だったら、なぜそんなに怒っている?」

「それは…」
みみは言葉を探すが、答えを見つけられない。胸の奥から込み上げてくる感情が何なのか、自分でもはっきりとはわからなかった。ただ、彼が自分以外の誰かと結びつけられることが、たまらなく嫌だった。それだけは確かだ。

ルーファウスは彼女の顎に指をかけ、顔を上げさせた。その瞳に映るのは、不安と怒り、そしてほんの少しの寂しさだった。

「聞け、みみ。」
彼の声は低く、しかしどこか優しい響きを帯びていた。
「あんなゴシップ記事を信じる必要はない。俺にとって、お前以外の女は存在しない。」

その言葉に、みみの目が大きく見開かれた。胸の中に溜まっていた不安が少しずつ溶けていくのを感じる。

「…本当に?」
消え入りそうな声で尋ねるみみに、ルーファウスは軽く笑って答えた。
「ああ、本当にだ。」

彼は彼女をそっと抱き寄せ、耳元で囁く。
「だが、こうして嫉妬してくれるお前も悪くない。正直、少し嬉しい。」

その言葉に、みみは驚きと羞恥で顔を赤くした。
「社長、それって…ひどいです!」

彼女が抗議しようとするのを遮るように、ルーファウスは彼女の額に優しく唇を触れさせた。
「ひどいと思うなら、もっと俺にお前の気持ちを教えろ。」

その後も彼は何度もみみに触れ、まるで彼女の不安を全て消し去るかのように、言葉と行動で愛を伝え続けた。

「お前は俺だけのものだ。」
そう言い切る彼の声に、みみの心はようやく満たされ、微笑みが戻ってきた。