夜も更け、社長室には静寂が訪れていた。ルーファウスはデスクに肘をつきながら、視線の先にいるみみをじっと見つめている。みみは新しい契約書の整理をしていたが、彼の熱い視線に気づくと手を止め、不思議そうに眉をひそめた。

「社長、何か御用ですか?」

彼は少し口を開けてから、何も言わずに首を振る。それでもその目は彼女から離れない。

「気になるんですが…」
みみが書類を置いて、彼に向き直る。

ルーファウスは一瞬視線を逸らし、ソファに身を沈めると、わざとらしくため息をついた。
「お前はいつも冷静だな。」

「え?」
突然の言葉にみみは困惑した。

「俺のために働き、俺の隣にいる。だが、お前からは…そうだな、何かが足りない気がする。」

みみはさらに混乱する。
「社長、それはどういう意味ですか?」

ルーファウスは顎に手を当てながら、考え込むように答えた。
「簡単に言えば、俺に愛されている自覚が足りないんじゃないかと思ってな。」

みみの顔が一気に赤く染まる。
「じ、自覚が足りないなんて…そんなことは…」

「そうか?」
ルーファウスは鋭い視線を彼女に向ける。
「なら、証明してみせろ。」

「証明って…どうすれば?」
動揺したみみの反応を見て、ルーファウスは少し満足そうに口元を緩めた。

「簡単だ。俺に愛の言葉を言ってみろ。」

その瞬間、みみの体がぴたりと固まる。
「そ、そんなこと急に言われても…!」

「何だ、難しいのか?」
ルーファウスはわざとらしく首を傾げて見せる。
「俺は毎日お前に愛を伝えているだろう?それに対する返事があってもいいんじゃないかと思うが。」

みみは俯いて唇を噛む。確かに、ルーファウスは普段から彼女に対して分かりやすいほどの愛情を示している。それに対して、彼に直接的な愛の言葉を返したことなど一度もなかった。

「…それでも、私には難しいです。」
か細い声でみみが答えると、ルーファウスは大げさに頭を抱えた。

「お前は本当に頑固だな。」
彼は立ち上がり、みみの前に歩み寄ると、その目を覗き込むように見つめた。

「なら仕方ない。少しヒントを与えてやろう。」

突然、ルーファウスは彼女の腰を引き寄せ、すぐ近くまで顔を寄せた。彼の低く甘い声が耳元で囁く。
「俺の名前を呼べ。そして、こう続けろ。『ルー、あなたを愛しています』と。」

みみの顔が炎のように真っ赤になる。
「む、無理です!」

ルーファウスは軽く笑う。
「本当に無理か?お前のその顔を見ると、ただ照れているだけに見えるが。」

彼の挑発に、みみは意を決したように顔を上げた。目の前の彼の真剣な瞳を見て、みみの心臓は高鳴る。

「ルー…」
みみが震える声で彼の名前を呼ぶと、ルーファウスの表情が一瞬驚きに変わり、それから満足そうに微笑む。

「…あなたを…愛しています。」

その言葉が紡がれると同時に、ルーファウスは彼女をさらに強く抱きしめた。そして、彼女の額にそっとキスを落とす。

「やればできるじゃないか。」
彼の声はどこか誇らしげだった。

みみは彼の胸に顔を埋めながら、恥ずかしさを紛らわせようとする。そんな彼女を抱きしめたまま、ルーファウスは静かに言った。
「その言葉を、もっとたくさん俺に聞かせてくれ。」

みみは頷くだけで精一杯だったが、彼女の鼓動は確かに彼に伝わっていた。