シンラビルの最上階、冷たい冬の風が窓ガラスを叩く音が響く中、みみは一人デスクに向かって仕事をしていた。時計を見ると午後9時を過ぎている。ルーファウスは別の会議に出ており、今夜は戻らないかもしれない。

デスクの片隅に置かれた雪の結晶を模したガラス細工に目を落とし、みみはふと昔の記憶に引き込まれた。

それは数年前のクリスマスイブだった。

***

あの日、ルーファウスの命令で彼女は重要な書類を届けに、吹雪の中を車でコスタ・デル・ソルからミッドガルに戻る途中だった。道は凍り、視界は悪く、いつ事故が起きてもおかしくない状況。だが彼の信頼に応えたい一心で運転を続けた。

しかし、不幸にも車が立ち往生し、彼女は真夜中の雪原で途方に暮れてしまった。携帯も圏外で、冷たい風が容赦なく吹きつける中、彼女は自分の無力さを痛感していた。

その時だった。眩しいライトが雪原を照らし、見慣れた黒い車が彼女の前に停まったのは。

車から降りてきたのは、コートも着ずに駆けつけたルーファウスだった。

「何をしているんだ!」
怒る声は冷たい雪の中でも温かさを含んでいた。

彼は彼女を無理やり車に乗せると、自分のコートを脱ぎ、肩にかけてくれた。手は冷え切っているのに、彼の手が自分の頬に触れた瞬間、みみの目から自然と涙がこぼれた。

「心配したんだぞ。お前に何かあれば…」
そう言ったルーファウスの瞳は、彼女がこれまで見たことのないほど切実だった。

その夜、彼らは雪が積もる道を慎重に走りながら、二人きりで過ごした。ルーファウスが彼女の手を離さなかったこと、その手の温かさを彼女は一生忘れないだろうと思った。

***

みみは目を覚ましたように現在に引き戻された。あの日のことを思い出すたび、彼への感謝と愛情が胸を満たす。

「寒いだろう?」

不意に聞こえた声に、彼女は驚いて振り向いた。ルーファウスが立っていた。会議で遅くなるはずだった彼が、いつの間にか戻ってきたのだ。

「ルー…どうして…」
「お前がまだ帰らないと思ってな。」

彼は彼女のそばに立ち、椅子を回転させると、彼女の目線に合わせてしゃがみ込んだ。

「何か考え事をしていたな。」
「ううん、ただ…雪を見てたら、あの日のことを思い出して。」

彼女の言葉に、ルーファウスの表情が少し柔らいだ。

「忘れるわけがないさ。お前が凍えそうになりながら、俺の名前を呼んで泣いていたあの姿は、今でも目に浮かぶ。」

彼の声には、どこか切なさが混じっていた。

「お前がどれだけ俺にとって大事か、あの日改めて気づいたんだ。」

彼はそう言うと、そっと彼女の頬に触れ、優しくキスをした。その温かさは、雪の冷たさとは対照的で、彼女の胸に深く染み込んでいく。

「今日は早めに帰ろう。雪の中、もう一度あの夜の続きをしよう。」
「続き?」
「俺の隣で温まることだ。」

彼の言葉に、みみは微笑んだ。彼と過ごすこの瞬間が、どれだけ自分にとって特別なのか、雪が降り続ける夜に改めて感じていた。

外の雪は静かに降り積もり、二人だけの世界を白く包み込んでいた。