出張先の高級ホテル。その最上階にあるスイートルームの窓越しに、都会の煌びやかな夜景が広がっていた。
部屋の片隅に置かれたワインボトルが半分空になり、二人のグラスには残り少ない赤い液体が揺れている。

みみはルーファウスの隣でカウチに座り、彼が注いでくれた最後の一口を口に含んだ。柔らかなアルコールの熱が身体に染み渡る感覚に、自然と微笑みが浮かぶ。

「こんなにのんびり酒を飲むのは久しぶりだな。」
ルーファウスがグラスをテーブルに置きながら呟いた。

「そうね、ルーとこんなにゆっくり過ごせるなんて、出張様様かもしれないわ。」
冗談めかして言うみみの頬は、ワインと酔いのせいでほんのり赤く染まっている。

ルーファウスは彼女のその顔をじっと見つめたあと、ゆっくりとカウチから立ち上がり、手を差し出した。
「そろそろ寝るぞ。酔ったままここで寝るには高級すぎる部屋だからな。」

みみはクスリと笑いながらその手を取った。彼に引かれるまま、広いベッドルームへと足を踏み入れる。

***

ベッドの上、二人は向かい合うように横になっていた。ルーファウスはワイシャツのボタンを外したまま、緩んだネクタイを直すでもなく、ただ彼女の頬を指でなぞっている。

「本当に可愛い顔だ。」
ぽつりと漏れた言葉に、みみは思わず目を見開いた。

「急にどうしたの? 酔ってる?」
彼女がからかうように言うと、ルーファウスは少しだけ眉を上げた。

「いや、本気だ。酔っていなくても、お前がどれだけ俺の目に美しく映っているか、知っておくべきだ。」

普段は滅多に聞けない彼の歯の浮くような台詞に、みみは赤くなった顔を枕に押し付けた。

「…恥ずかしいから言わないで。」
「俺はお前の全てを褒め尽くすつもりだが。」
「やめてったら!」

顔を隠すみみの耳にキスを落としながら、ルーファウスはさらに甘い言葉を囁く。

「お前が笑ってくれるだけで、どれほど俺が救われているか。」
「お前の温もりが、俺の世界の中心だということを分かっているか。」

「……もうやだ、聞いてられない。」
枕に顔を埋めたまま呟くみみに、ルーファウスはそっと手を伸ばし、彼女の顔を引き寄せた。

「じゃあ、口で止めてみろ。」
そう言うと、彼は深く、優しく唇を重ねた。

***

夜が更けていく中、二人はどれだけキスを交わしただろうか。唇を離すたびに囁かれる甘い言葉に酔いしれながら、彼女もいつの間にか素直に愛情を言葉にしていた。

「ルー、大好き。」
「俺もだ。もっと言え。」

ルーファウスの笑みは、いつもより柔らかかった。

***

やがて、窓の外が薄明るくなる頃、二人はようやく静かに寄り添って眠りについた。
絡み合った指と指の感触を確かめながら、誰よりも大切な存在が隣にいる幸せを噛み締めながら。

夜は明けても、二人の時間は永遠に続いていくように思えた。