デスクランプの明かりだけが灯る部屋で、みみはパソコンに向かいながら黙々と作業を続けていた。深夜をとっくに過ぎたというのに、彼女の目にはまだ焦りが滲んでいる。

「あともう少し…これが終われば…」
小さく自分に言い聞かせるように呟き、彼女は画面に視線を戻す。だが、その肩は明らかに限界を迎えていた。動きが鈍くなった手元に気づく暇もなく、ただ義務感だけで動いているように見える。

そんな様子を部屋の入口から見つめていたルーファウスは、ため息をついた。

「みみ。」
低く抑えた声が静寂を破る。

「え?」
振り向くと、そこには冷静な表情のルーファウスが立っていた。その眼差しには微かに怒りが混じっている。

「何時だと思っている?」
「でも、これを終わらせないと…」

みみが言い訳をしようとした瞬間、彼はデスクに近づき、彼女の手をそっと止めた。

「限界まで働けとは言った覚えはない。」
「でも、ルー…」
「言い訳は聞きたくない。」

そう言うと、ルーファウスは容赦なく彼女を椅子から抱き上げた。

「ちょ、ちょっと!何してるの?」
「寝室へ行く。お前が自分で行かないなら、俺が連れていく。」

彼の腕の中で暴れるみみだったが、疲労のせいで抵抗はほとんど力が入っていない。それを知ってか知らずか、ルーファウスは口元にわずかな笑みを浮かべながら寝室の方へ歩き出した。

***

柔らかなベッドの上にそっと降ろされると、みみは思わずため息をついた。

「でも、仕事が…」
「明日の朝で十分だ。」
彼はそう言って、彼女の隣に腰を下ろした。

「無理をして倒れたらどうする?俺がお前を看病しながら一人で会社を回せとでも?」
その言葉にはからかいのニュアンスが含まれていたが、その瞳には本気の心配が映っている。

「ごめんね、心配かけて。」
みみは申し訳なさそうに俯いた。

「謝る暇があったら、目を閉じろ。」

彼は彼女の髪を優しく撫で、額に軽くキスをした。その行為に、みみは驚きつつも心がほぐれていくのを感じる。

「ルー、そんなことされたら…」
「眠れ。」
彼の言葉は断固としているが、その声はどこまでも優しい。

ルーファウスは彼女の隣に横になり、そっと腕を伸ばして彼女を抱き寄せた。みみは彼の胸の鼓動を聞きながら、少しずつ瞼が重くなっていくのを感じる。

「お前が倒れるのが、一番困るんだ。」
彼は低く囁きながら、再び彼女の髪に唇を寄せた。その言葉に含まれる深い愛情を感じ、みみはかすかに微笑む。

「ルー、ありがとう。おやすみ。」
「おやすみ、みみ。」

彼の腕の中で、みみは久しぶりに安らかな眠りについた。その顔を見ながら、ルーファウスは満足げに微笑む。

「これでいい。お前は、ちゃんと自分のことも大事にしろ。」

彼はそう静かに呟くと、自分も目を閉じた。部屋は静けさに包まれ、二人の穏やかな寝息が響いていた。