熱情
わたしの手元から、くしゃり、と音がした。玄関の壁はひやりとした冷たさからだんだん私の背中と彼の手の熱がうつって温くなってきている。コツコツ、と後ずさる私のパンプスの音と距離を詰める彼の革靴の音。しんとした部屋にその音が響いていることにも気づかないほど、わたしたちは今お互いに夢中だった。
鋭い視線と強い言葉に反して、彼のキスはとても柔らかだ。タバコのむせるような苦みとミントガムのクリアさに混じり、彼のうちに秘めた優しさがにじむように甘さを感じる。時折「はぁ、」と吐く小さな息にくらくらと酔いそうになって、彼の後頭部に回した手の指先に力を入れた。またくしゃりと音がした。彼の黒髪についたワックスのせいでわたしの手は少しべとつく。
「ん、は…じゅうと、さん…」
「…うん」
銃兎さんは、壁につけているのを掌から肘に変えてさらに距離を詰めてきた。そして掌はわたしの頭に乗せ、まるで愛おしむように一撫でした。やがて繋がり続けていた唇は緩やかに離れ、熱を持った瞳を間近で合わせる。
「そんな顔してると、このまま襲うぞ」
わたしの頬に手袋をしていない彼の手が重なって誘うように撫でた。もう襲っているようなものなのに、最後の警告のように言う銃兎さんが少しおかしく感じて、笑みがこぼれてしまう。
「あなたの部屋にのこのこついてきた時点で、気付いてください。」
銃兎さんの後頭部に回したままだった手を引き寄せて、わたしからキスをした。目を合わせたまま、これから彼とこのまま数時間離れることは無いであろうことを覚悟し、期待する。ぐい、と体が宙に浮く感覚がして思わず両手を彼の首に回してしがみついた。持ち上げた拍子にわたしの足からストラップのないパンプスが滑り落ちて玄関に落ちる。彼も焦るように革靴を脱ぎ散らし、寝室へ足を進めた。わたしはぼんやりとしきった頭の中をそのままに彼に身を委ね、そのしっかり締まった彼のネクタイを緩めにかかった。
鋭い視線と強い言葉に反して、彼のキスはとても柔らかだ。タバコのむせるような苦みとミントガムのクリアさに混じり、彼のうちに秘めた優しさがにじむように甘さを感じる。時折「はぁ、」と吐く小さな息にくらくらと酔いそうになって、彼の後頭部に回した手の指先に力を入れた。またくしゃりと音がした。彼の黒髪についたワックスのせいでわたしの手は少しべとつく。
「ん、は…じゅうと、さん…」
「…うん」
銃兎さんは、壁につけているのを掌から肘に変えてさらに距離を詰めてきた。そして掌はわたしの頭に乗せ、まるで愛おしむように一撫でした。やがて繋がり続けていた唇は緩やかに離れ、熱を持った瞳を間近で合わせる。
「そんな顔してると、このまま襲うぞ」
わたしの頬に手袋をしていない彼の手が重なって誘うように撫でた。もう襲っているようなものなのに、最後の警告のように言う銃兎さんが少しおかしく感じて、笑みがこぼれてしまう。
「あなたの部屋にのこのこついてきた時点で、気付いてください。」
銃兎さんの後頭部に回したままだった手を引き寄せて、わたしからキスをした。目を合わせたまま、これから彼とこのまま数時間離れることは無いであろうことを覚悟し、期待する。ぐい、と体が宙に浮く感覚がして思わず両手を彼の首に回してしがみついた。持ち上げた拍子にわたしの足からストラップのないパンプスが滑り落ちて玄関に落ちる。彼も焦るように革靴を脱ぎ散らし、寝室へ足を進めた。わたしはぼんやりとしきった頭の中をそのままに彼に身を委ね、そのしっかり締まった彼のネクタイを緩めにかかった。