さよならのゆくえ




高校3年生12月のある日の放課後、3階にある教室の窓辺に座って校庭を眺める。
はあっ、と窓に息を吐いて白く曇った窓にある名前を書く。って、乙女かっ!…なんて自分にツッコミを入れて慌ててセーターの袖で消した。
恥ずかしいなんて気持ちの後に急に切ない気持ちが溢れ出してきたのはそんな行為をした自分の所為。

…そう、全部、自分の所為。


「馬鹿みたい…」


さよならのゆくえ


所謂幼馴染の彼とは昔すごく仲良しで、学校帰りは毎日一緒に帰っていた。
同じ高校に進学した彼は、いつの間にか急に身長が伸びて顔も男らしくなって、
いつの間にか女子から王子扱いされるようになっていた。
そんな女子生徒のアイドルである彼は、私にとっては所詮幼馴染みでしかないし、何ら変わらない日常を送っていたはずで。

ところが彼には1ヶ月前に彼女ができた。…いや、なんならずっと彼と一緒だった私が彼女の気持ちに気付いてよかれと思い時間を作ってあげた、恋のキューピッド的な?とにかく彼に彼女が出来てから、日常であった隣の教室からの迎えはない。
そりゃそうだ、私はあくまで”幼馴染み”だったのだ。そんなこと昔から分かってた。でも、分かりたくなかった。


「やっちまった!」


遠くから聞こえた懐かしい声にハッとした。


「もー、サボくん!こんな時に携帯なんか忘れて!映画遅れちゃうよー!」

「ごめんって、すぐ取ってくるから!」



「………。」


それは現在進行系で悩みの種である問題の2名。
慌てて座っていた窓辺のスペースから飛び降りて彼らと遭遇しないように学校を出た。

抜け出した放課後の静かな校舎からは、ついこの前まで私の隣で聞こえてたサボの笑い声が聞こえる。
1人で歩く帰り道は何度回数を重ねても慣れない。長くて、静かで、寂しくて。


「…嫌い、」


モヤモヤした気持ちはずっと消えない。私って今まで悩みってどうやって解決してたっけ?
…あぁそうだ、そんな時はいつもサボがいてくれてたのか、とまた自滅。

寒さでじんじんしてきた耳を手で暖めるように触る。

ー どうした?なんかあったか?
ー え?なんにもないよ、別に普通だよ
ー 嘘。お前、昔から嘘つくとき耳触る癖あるからな!


そんな昔の会話がつい最近のことのようにフラッシュバックする。
何も言わなくてもすぐに気付いてくれた。…違う。気付いてくれるからこそ何も言わなかったのだ。
ずっとそういう彼に甘えていた。

いつから、話せなくなってしまったのだろうか。
ずっと馬鹿じゃないの?と思っていた”大切なものは失ってから気付くもの”というフレーズがぐさり、と胸に突き刺さる。
きっと、彼とは目も合わずに卒業していくのだ。

「はぁ…、」

ふいに出たため息は白く、まるで私の気持ちように彼に届かずそのままふわりと風に流されていく。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。


「……っ、」


危険を察知して上を向いたのに、そんな抵抗なんて呆気なく涙が溢れ出る。
たった1ヶ月、彼がいないだけでこんなに自分が空っぽになるなんて。
さよなら、と小さく呟いた声は誰にも届くことなく消えていった。




さよならのゆくえ
「……ルリ!!」
「……っ!」




fin.