隣にはきみがいい
1ヶ月前、初めての彼女ができた。顔は結構タイプな子で、前から可愛いとは思ってた。別に好きだったわけじゃないけど、告白してくれて、軽い気持ちで付き合って見ることにした。
最初は彼女っていう存在にテンションも上がって。普通に彼女と居ると楽しいし、付き合ってればそのうち本当に好きになれると思ってた。でも、1ヶ月経っても仲良い女友達っていう感覚でしかなくて、一緒に居てもなんだか落ち着かない。その原因も分かってるくせに、気づかないフリをしていた。
そんな今日は、放課後彼女と映画に行く約束をしていた。映画まで少し屋上で時間を潰して、いざ学校を出ようとした時。
「あ、やべ、携帯忘れた」
屋上で1回も出した記憶がないから多分教室。彼女に少し文句を言われるけど、気にせず教室へ戻る。
そういえば、ルリはどうしてるだろうか。毎日一緒に帰っていたがこの1ヶ月で連絡も取らなくなってしまった。隣のクラスだということもあり、顔も見てない気がする。
教室がある3階へとついて、自分の教室で携帯を見つけて回収し、なんとなく気になってルリの教室を覗いた。空いたドアから、懐かしい香りがする。それはルリの少し強めの柔軟性。
「さっきまでいたのか…?」
奥まで進み、窓から校庭を見下ろす。丁度校門のところに、ボルドーのショートダッフルを着た女の子の後ろ姿。3階から見下ろしているからだろうか?最後に見た時より小さく見える。
手をついた窓辺のスペースには少し、ぬくもりを感じる。もう一度窓を見れば、一部だけ結露していることに気づく。何か書いてあったみたいだ。
…BO?…ボ?
ルリが書いたのだろうか。…だとしたら。自惚れてもいいのだろうか。そこにはSABOと書いてあったんじゃないか、彼女も俺と同じ気持ちなんじゃないかと。そう考えると急にルリがどうしても愛おしくなってしまって、もう自分に嘘をつくのは辞めようとと思った。
「…サボくん?ここにいたの?」
「…ごめん、俺…」
「いいよ、わかってた。好きな人の好きな人くらい、わかってたの」
知ってたのに、縛り付けてごめんねって涙を流した彼女は、本当にいい子だったと思う。”ごめん”と呟いて彼女の横を通り過ぎて走った。ルリに追いつくように、全力で。
2つ目の信号を右に曲がったところで、彼女の背中を見つけた。
「……ルリ!!」
「……っ!!」
振り向いた顔には涙の跡が見えて、少し吃驚したけど、そのまま追いかけて彼女を正面から抱きしめた。嗅ぎ慣れた柔軟剤の香りは、やっぱり安心する。でも彼女は余計に泣き出してしまって。
「…なんでっ、サボ…!」
「別れてきたんだ、やっぱ、俺さ…」
隣にはきみがいい
(そういや窓に書いた俺の名前、残ってたよ)
(……え!!)
(あ、あれやっぱり俺の名前だったんだ?)
fin.