不良少女とツンデレ先生
高校3年生の春、希望進路の提出時期になって先生はみんなの進路相談で大忙し。別にやりたいこともないしフリーターでいいと思っている私にはつまらない時間で。堂々と教室を抜け出して向かった先は屋上。
制服のカーディガンはベージュに、男子から借りたネクタイ、スカートは膝上。髪は決して明るい訳ではないが今流行りのアッシュグレーで。どれも可愛いと思ってしているのだけど、実際は全て校則違反。所謂不良と呼ばれる括りだ。響きが悪い。他にもなんかあったでしょ、”マイペースな子”とかさ。
フェンス前のベンチに腰を掛け、ポケットから取り出してタバコを咥える。これだけは可愛くないけど、まぁもう手遅れ。火をつけて吐き出した煙は、お世辞でもいい香りではない。
見下ろした校庭には授業中の隣のクラス。エース先生が上裸で走り回ってる。…あの人変態?それともバカ?
でも、エース先生は優しくてかっこよくて明るくて、女生徒から人気はトップクラス。まあ確かにかっこいい。彼女いるのかなー。
「…おい」
低い声で呼ばれて振り返る。そこには担任のローさん。これまた女生徒からの人気トップクラスの先生だ。確かにかっこいいけれど、エース先生とは対照的なクールで知性的なタイプだ。
「あーローさん」
「さんじゃねぇ、先生だ。こんなとこで何をしてる」
「んー、エース先生に見惚れてた」
適当に流すと、先生は舌打ちして近づいてタバコを取り上げた。
「そっちじゃねェ、こっちだ。未成年がタバコなんて吸いやがって」
そう言って私から取り上げたうっすら口紅がついたタバコを自分が吸いだした。
「あー、間接ちゅーだ」
「ブッゴホ…ゴホ!!」
吹き出して咽せたローさんを汚いなー、って笑うとものすごい冷たい目で睨んできた。そういえば、この人さっきまで教室で大行列を作ってた”ローさんの進路相談室”はどうしたのだろうか。
「お前以外、全員希望進路提出済みで帰った。俺の指導が優秀なおかげで」
「え、エスパー?そして自過剰?」
「顔に出てんだよバーカ」
「あー私って、喋らなくても人と会話できるんだ!」
それを聞いたローさんはより長くタバコを吸って深いため息をつく。その煙は風に乗って私の顔面にクリティカルヒット。気を使えない人だ。
「ねー、タバコ臭い」
「てめぇのだろうが!」
「そうだっけ?ふふ」
あんまりちゃんと話したことはないけど、この人をからかうのも悪くない。そう思いながら新しいタバコを取り出して火をつけた。
「てめぇ、新しいの吸ったら取り上げた意味ねぇだろ」
「あるよー」
「なんだよ、言ってみろよ」
「ロー先生と関節ちゅーできるんでしょ?」
また少し顔を赤らめたローさんは”もう二度とやらねぇ…”なんて呟いたけど、それはそれで普通にありがたい。(タバコ高いし)
「それで、ローさんはなんでここにいるの?」
「お前がこの紙を提出しねぇと俺の仕事が終わらねェ」
「あーなるほど、ね」
ごもっともだ。問題児を抱えた先生は大変だ。
「ねー、ローさんは私のこと好き?」
「あァ?何言ってやがる」
「希望進路、ちゃんと書いて私の机に置いとくね」
先生の手から引き抜いた白い紙と引き換えに、私の新しい吸いかけのタバコをローさんの指に挟んで屋上を後にした。
不良少女とツンデレ先生
(第一希望:ローさんのお嫁さん。)
(……あいつ!)
fin.