復讐にキス


「久しぶりね、ロー」
「…ルリか」

初恋をしたのは15,6年程前だっただろうか。明確な時期は覚えてないが、相手は私がドンキホーテファミリーに入った少し後にやってきた男の子。
トラファルガー・ローと名乗った彼は、全てをぶっ壊したいと言っていた。そんな言葉を発したのは、大好きだった生まれ故郷を崩壊させられた恨みの末辿り着いた答えだったんだろう。ある人に家族を殺され復讐の為だけに生きてた私は、彼を”同志”だと思い惹かれていた。

ファミリー入りたての頃、コラさんにはまぁまぁ酷く扱われて大変だった。でもある日ゴミ山まで飛ばされて「なぜここまでされて出ていかないのか」と問われ幼い私は正直に理由を話してしまった。するとコラさんは怒るどころか、まるで自分が全ての原因かのように泣いて何度も謝ってきたのだ。それからずっと、コラさんを陰ながら慕っていた。
コラさんは多くを語らなかったけれど、私も頭は冴える方で、なんとなく全てを悟って。…あなたは海兵で、兄がどんどん道を踏み外すのを阻止しようとしていたんでしょう?…今ではもう、本当のことはわからないけど。

いつからかローとコラさんはローの病気を治す旅に出てからファミリーに戻ることは二度となかった。

それから長い月日が経った今、この荒れた地ドレスローザでドフラミンゴの前で倒れているの初恋の相手。片腕がなくなってもなお、勝てる気でいる彼には叶わないと思った。

「ルリ…お前にこいつを殺させてやるよ」
「若…、ローが私の初恋の人って知ってるわよね」
「だからこそだ…クク…」
「じゃあ、思いの丈を話してからでいいかしら」

本当にこの人は心の奥底まで、闇に覆われている。可哀想な人だ。そう思いながらローの頬に手を添え目の前で膝をつく。

「ルリ…お前!」
「私、家族をある海賊に殺されたって、前話したよね」

若とトレーボルに聞こえない声でローに話しかける。私を睨む冷たい視線は、きっと私を軽蔑しているんでしょう?

「お前は何故…!あんなに慕っていたコラさんを殺されて平気でこのファミリーにいれる…!」
「…そのある海賊は、ドフラミンゴよ」
「…!」
「私はこのファミリーに入った時から、あいつを殺すことしか考えてなかったわ」

でも、残念ながら私が食べた”キュアキュアの実”は傷を癒したり、回復したりできるだけで、戦闘向きではなくて到底殺すことなんてできなかった。”ハートの海賊団”という名前を知ってから、この日が来ることは分かってた。弱虫な私はあなたを待っていただけかもしれない。…あなたなら、絶対にそうすると思ったから。だから今私にできることは…

「…少しくらい、回復したかしら」
「あァ、充分だ…」
「ねぇ、ロー。”全て”が終わったら、あなたの船に乗りたいの」

自分から言いだして置いて、ローの次の言葉を聞くのが怖くて。ローの唇を自分の唇で勝手に塞ぎ、最後の回復能力を送り、背を向けてドフラミンゴの元へと向かう。



「ルリ…ひとつ教えてやる」

そんなわたしの気もしれず、口を開いたローの言葉に目を丸くする。

「……馬鹿、」

ドフラミンゴの前までたどり着き、ローと目を合わせて頷く。

「感動的な再会と別れの挨拶は終わったか?ルリ…」

「えぇ、さよならを言うのはあなたよ…ドフラミンゴ」





「…シャンブルズ」




気づくと私は王宮の外にいて、それと同時にドフラミンゴの叫び声が聞こえた。



復讐にキス
(ー “悪いが今、船は俺の部屋しか空きはねぇんだ”)


fin.