あれから数か月経ったが、未だに私が何をあげたのかはわかっていない。
何度センシングしても、カラ松は言葉にできないの一点張りだった。言葉にできないとなると私自身が気づかなければならない、ということだろうか。それにしてもヒントくらいはくれてもいいと思うのだが、それすらない。そしてカラ松が自殺して私とのセンシングを強制的に終わらせる行為にもだんだん慣れてきた。決して慣れたくはなかったが、回数を重ねるごとにまたか…と思うだけになった。
今日は仕事がなければセンシングもしない日なので、ぶらぶらと歩いていた。そういえばもうすぐ六つ子の誕生日だ。カラ松に買ってあげるついてにみんなにも買おうかな。一人にだけ買えば贔屓だと言うだろうし、一人一人違うものを買うとあいつのほうが高そうだと揉めそうなので同じものを探そう。
(腕時計はしなさそう…時間とか気にしてなさそうだし。パスケースももう使わないかなあ…。アクセサリーだと好みとかあるし。難しいなあ……あ。)
買い物も終わり私は自宅へと足を進めていた。私は社宅マンションの四階に住んでいる。ちなみに実家と六つ子の家との距離は歩いて十分程だ。近いとはいえ一人暮らしに憧れていたため、社宅がある会社を選んだのは言うまでもない。運動がてら階段で四階まであがり、自分の部屋に入る。荷物を部屋に置き、飲み物を取りに台所へ向かう。
「おかえり、なまえ」
いないはずのカラ松の声に、驚きを隠せず勢いよく振り返った。センシングをしていないはずなのに、カラ松が私の部屋にいる。センシングも、仕事もお休みの休日をただただ平凡に過ごしていた。過ごしていると思っていた。私はいつからセンシングをしていた?いや、いつからセンシングをしていないと錯覚していた?…考えてもわからない。こんなことは初めてだった。
「ど、どうしたの、カラ松」
「なあ、死ぬってどういうことだと思う?」
「死ぬ…?いきなりどうしたの」
「今の俺を見て、生きてると思うか?」
「当たり前でしょ。眠ってるとはいえ心臓は動いてるよ」
「脳死という言葉があるだろ。俺はまさにその状態だ。もう、脳は死んでいるんだ。それなのに生きていると言えるのか?」
「私は目を覚ますって信じてるよ。死んでなんかないって。…ねえ、それって諦めるってこと?もう目を覚まさないってこと?私が見つけられないから?だからもうだめなの?」
思わず顔を俯いてしまう。泣いてしまいそうだった。センシングを繰り返してきた私を、否定された気がした。もう生きたくない、そう言われた気がした。
「そういうことじゃない」
「…じゃあどういうこと」
「終わりにしないか、そろそろ」
そういったカラ松に視線を向ける。また、顔が、ない。いつのまにかバルコニーにいたカラ松が後ろに倒れていく。待って、終わりってどういうこと。カラ松はもう諦めてるの。死を受け入れてしまうの。私があげたもの、一生懸命探すから。お願い、行かないでカラ松。私を、置いていかないで。
「一人にしないで、カラ松…」
地面にカラ松が叩き付けられたと思われる音と共に意識が途切れた。
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