中学に入って僕たちが一番にしたことは、不良の先輩たちと仲良くなること。トト子ちゃんは昔から可愛い容姿のせいで女子からは妬まれ、男子からは好意からくるいたずらにあうことが多かった。そのたび僕らが裏でこっそり始末していた。僕たちだけじゃどうしようもない事が起きてから対策をとったんじゃ遅い。先手必勝!なんてね。しかしこんなやつらと仲良くなるために1ヶ月も費やしてしまった。でもまあ、これでトト子ちゃんが何かされる心配はなくなるでしょ。
 僕たちの狙い通り、トト子ちゃんが何かされることはなかった。
 しかしこれまでと変わらず過ごせると思ったのも束の間だった。1ヶ月も不良に費やしたせいでトト子ちゃんに初めての女友達が出来てしまった。今までは友達というほど仲の良い子はいなかった。まあ作らせる気もなかったし、トト子ちゃん自身諦めているところがあったと思う。ちょっと目を離した隙にこれだ……。どうやってトト子ちゃんを取り戻そうか。とりあえずはどんな子かを知るべきかな。
 しばらく様子を見ることにした。話してみると、とにかく普通の女の子だった。特別可愛いわけでもないし、すごくいい子というわけでもない。成績も普通。運動も普通。本当に普通の女の子。しかしトト子ちゃんは初めて出来た友達だからか、学校では彼女にべったりだった。僕たちと話すときも彼女の話ばかりだし、彼女がいる方を見つめている。
 この子、邪魔だなあ……。
 そう思ってはいるもののどうにもしようがなかった。せっかく仲良くなった不良たちも使いようがない。どうしたものか。いろいろ考えていたら明日提出の宿題を机の中に忘れたことに気がついた。危ない危ない、トト子ちゃんに教えてもらう約束してたんだった。兄さんたちには先に帰ってもらい、急いで取りに戻った。ふと、自分の机の近くにくしゃくしゃになった紙が落ちてるのがみえた。いつもなら気にもしないが自分の名前がみえたので拾って広げてみた。
「え……?」
そこには彼女への悪口が書いてあった。トト子ちゃんと仲良いからってトド松くんたちとも仲良くなるのはずるい。話しすぎ。ブス。死ね。ひどい内容だった。可哀想にと思ったのと同時に、これだ!と思った。ああ、僕って天才。
 それからすぐに、仲の良い女子に彼女の筆跡を真似てもらい僕への悪口を書いてもらった。この紙をまずは兄さんたちとトト子ちゃんに見せて、そのあと先輩たちに見せれば完璧。そして頃合いを見て、「筆跡が彼女に似てる気がする」と僕は悲しい顔を装って呟くのだ。あとは兄さんたちがどうにかしてくれるでしょ。
 次の日彼女を呼びだした。そしてお前がやったんだろと責め立てた。やってないと言おうが関係ない。何もしてないのにごめんね、なまえちゃん。でもトト子ちゃんと仲良くなっちゃった君が悪いんだよ。まあ、もう話すこともないだろうからどうでもいいけど。
 トト子ちゃんはまた一人になった。これで元通りだね、トト子ちゃん。
この日からまた、トト子ちゃんに友達ができることはなかった。

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