トト子ちゃんに初めての女友達ができた。僕はそいつを一度だけ見かけたことがあった。放課後の教室で一人泣いていた。それだけ。それだけなのにその顔がやけに頭に残った。
 トト子ちゃんは顔はいいが性格はブスだ。まあ僕は顔が良ければなんでもいいんですけど。そんなトト子ちゃんと仲良くできると言うことは、相当器が大きいのだろう。
 しばらく二人を観察した。トト子ちゃんは毎日毎日幸せそうに笑っていたし、あいつもずっと笑顔だった。
 しかしたまたま聞いた会話はひどいものだった。トト子ちゃんはあいつに予定があるにも関わらず、自分と出掛けて欲しいがために先約を断らせていたのだ。さすが我らがトト子ちゃん、自己中に磨きがかかっている……。それで先約を断ってトト子ちゃんと出掛けるあいつもあいつだけど。まあ、トト子ちゃんはとにかくあいつと一緒にいたいらしい。朝のおはようから始まり、授業の合間の休み時間、昼休み、部活が始まるまでの時間。本当にずっと一緒にいた。
 観察してわかったのはトト子ちゃんのあいつに対する想いは友情の域を超えているということ。どうみてもおかしい。僕たちと話すときも視線の先はあいつだし、話の内容はあいつの事が8割りだった。今日は何したとか明日はショッピング行く約束したとか。僕たち誰一人興味のない話だけど、トト子ちゃんと話せるなら話の内容など実際なんでもいい。
 トト子ちゃんの想いが友情ではなく、恋愛感情なのは明らかだった。まあ、トト子ちゃん自身は気づいてないだろうけど。なんせ初めてのオトモダチ、だからね。
 ただ、そのオトモダチはトド松が好きみたいですよ、トト子ちゃん。

*

 トト子ちゃんがあいつの事を想っているのをトド松は気にくわないらしい。目が冷たいんだよな、あいつの事を見る目が。わかりやすすぎ。
 トド松は与えられるばかりだったせいか、失うことを極端に恐れている。別にトト子ちゃんを失うわけじゃないのに。
 そんな冷たい目にも気づかず楽しそうにトド松とあいつが話しているのが見える。それを見て腹が立ったと同時になんか違うと思った。あいつに笑顔は似合わない、と。……なぜ?ああ、そうだ。あいつは泣いてるときが一番イイ。一番始めに見た、あの泣いているところを思い出す。あいつが何で泣いてたなんか知らない。けれど、あの顔が頭にずっと残っていたのはそういうことか。うわ、なんかすげー泣かせたくなってきた。やばい、考えただけでもゾクゾクする。まじかよ……。僕あいつのことが好きだったのか。まじウケる。 あー、泣かせたい。
 ふと教室の入り口を見るとトト子ちゃんがあいつらを見ていた。そりゃもう無表情で。女の嫉妬怖すぎ。声かけられた途端ふにゃって笑っちゃってさ。本当に可愛い。それにしてもトト子ちゃんって本気で怒ると無表情になるのか…覚えておこう。
 それから数日後、トド松が涙目で僕たちのところにきた。どうやら女子に悪口を書かれていたらしい。うわ、この字あいつの字にくっそ似てんな。でも似せてるだけだ。…あーそういうことね。トド松はそういうやり方するよな。なあ、あいつ書き出しは必ず一文字分あける癖あるんだよ。爪が甘いな、トド松。やるならとことんやらないと。
うわっトト子ちゃん今ちょっと笑った。こわ。笑ったってことはトド松のこと好きじゃなくてよかったとかそんなこと思ってんのか?女って怖い、というかもはや凄い。本当にそう思ってるかはわかんないけど。でもその考えに行き着く僕も気持ち悪いな…。つか好きな癖にわかんねえのかよ、あいつじゃないって。
 明日あいつを教室に呼び出すことになったらしい。ちゃんと聞いてなかった。別に好きだからって庇う必要もないし。てか好きなやつの悪口書くやつとかいないだろ。どんな愛だよ。あーあ可哀想に。でも、あいつ泣くかな……。できれば僕が泣かせたいけど、泣くならなんでもいいか。あー楽しみ。

*

 結局あいつは泣かなかった。
このあと教室から出てくるあいつを慰めたらどうなるんだろう。怒るんだろうか。トド松のことを好きなことを知っていたのになにも言わなかったことを。
 それか、トド松がお前をトト子ちゃんから離したいがために嵌めたんだ、と本当のことを言うのもいいかも。好きなやつに嵌められたなんて知ったら泣くだろさすがに。泣いて、睨んで、僕を責めるかもしれない。知りたくなかった、と。……こっちの方がイイな。あー僕なんかに好かれちゃって可哀想なやつ。
あいつが教室を出てくるまで、あと、

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