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王さまゲーム。


「退屈だ。何か面白いことをしろ。」
「・・・無茶ぶりにも程があるでしょ。」
「何だ?芸の一つもないのか、無能め。」

この物言い。こいつの傍若無人っぷりといったら、もはや清々しいくらいだ。私を生得領域に無理やり引き込んでから数日、ずっとこの調子だし。

「もういい加減、外に出してよ。皆心配してるだろうし。」
「断る。小僧にはお前が生きていると教えてやったし、問題なかろう?」
「・・・はあ・・・。」

呪術高専で学ぶ私は、同じ一年の虎杖くんの中に住む特級呪物、呪いの王「両面宿儺」になぜか気に入られてしまい、事あるごとにちょっかいをかけられてきた。
しかもこの呪い、わがままで一度言い出したら絶対に引かないし曲げない。
私は領域の中に閉じ込められてからこの方、ずっと宿儺に腕やら足やらを掴まれて離してもらえずにいた。

「物憂げだなぁ、シズク。そうだ、俺がお前を楽しませてやろう。」

何か思いついた顔で、宿儺が笑う。あ、これ絶対ろくでもないこと思いついた顔だ。
私は諦めが過ぎて抵抗すら面倒だったので、はいはいと適当に返事を返す。

「で、何を思いついたの。」
「現代ではおうさまげえむという遊びがあるのだろう。それをやるぞ。」
「・・・よくご存じで、王様。」
「小僧がてれびとやらで見ていたのでな。」

宿儺は何もない空間から、割りばしのような木の棒を取り出して見せた。
両面宿儺の生得領域には、骨やら屍っぽい何かで出来た山と、見渡す限りの赤黒い景色しかない。
何か欲しければ出してやる、と初日に言われたけど、骨の山の上にソファやらテーブルやらがあるというのもなかなかシュールなので丁重にお断りした。
この領域は心の中のようなもので、イメージすれば物を出せたりするらしい。便利だなぁ。

「・・・って、王様ゲームなんて二人でやるもんじゃないよ。そもそも大人数向けの命令ゲームだし。」
「ほう?詳しく話せ。」

教えを乞う態度じゃない・・・!
しかも頬杖をついた反対の手で、私の髪を弄っている。くるくると指先を絡ませて、なんとなく楽しそうだ。

「この棒にね、数字と王の字を書くの。それを何人かで引いて、王の棒を引いた人が数字を指定して命令を出す。それは絶対で、よっぽどじゃなきゃ断れないのよ。」
「ほう。死ねと命ずれば自死せねばならん訳だな。面白い。」
「よっぽど!それはよっぽどなので断れます!!」
「・・・何だ、詰まらぬ。他に何を命ずることがあるのだ?」
「・・・はあ、あんたの思考回路って・・・。」

大きなため息と共に、体を前に倒す。数日ずっと宿儺に張り付かれて、肩が少し重く感じた。だってずっとくっ付いてきて、どこかを掴まれたままでいるんだもん。

「・・・肩もみをさせる、とか?」

ふと思いついたことを口に出してみる。
体ごしに振り返ってみると、宿儺は驚いたような顔をしてこちらを見ていた。

「そんな下らんことをさせて、何になるというのだ?」
「・・・このゲームはさ、大体男女の飲み会・・・あー、宴?みたいなとこで、体に触れたりちょっと恥ずかしいことさせたりして、それを見て周りがきゃーきゃー喜ぶ、みたいな感じなんだよ。」
「ほう」
「だから、軽く触れたりする系の命令が多い・・・のかな?よくわかんないけど。」
「では命じてみろ。偶にはそちら側というのも面白いかもしれん。」
「・・・ええ・・・絶対めんどくさいことになるじゃん・・・。」
「二人では籤引きにならぬのだろう?早くしろ。」

不承不承ながら、私は宿儺に「王」と書かれた棒を見せながら言った。

「えー・・・と、一番、王様の肩を揉む。」
「ケヒっ」

宿儺は何がそんなに愉しいのか、いつもの邪悪な笑顔を零した。よし、と着物の袖を少し捲り、私の腰をがしっと掴む。

「きゃ!なんで腰掴むのよ!肩だってば」
「もっと此方に寄れ、遠くてやり辛い。」

軽々と引き寄せられた私の体は、ゆるく開かれた宿儺の両足の間に収まる。大きな手が腰を離して、肩に乗せられた。

「ふむ、肩もみとやらはしたことがない。教えろ。」
「まあそりゃそうだよね・・・。あのね、手のひらと指で肩をこう・・・ぎゅってしたり、するの。こう。」

私は自分の手を空中で動かして、宿儺に見せた。宿儺は顔を乗り出し、私の肩に乗せてそれを見ている。だから、それが肩こりの原因なんだっつーの。

「よし。要は解せばいいのだな。」
「そう・・・なんか不安だけど、よろしくね。」

嫌な予感しかしないけど、私は抵抗を諦めて首を少し前に倒した。宿儺の熱すぎるくらい高い体温が、両肩に触れる。大きくて骨ばっていて、おまけに長い爪が怖い。

「こうか。」
「・・・ん、もう少し強くても・・・あ、やっぱいい。ちぎられたらヤダから。」
「ケヒヒ、こんな無防備な格好であれば、首を捥ぐ方が早い。」

物騒な事を言うので、思わず体がこわばる。この領域で私に危害を加えたりしたことはないけれど、虎杖くん曰く、平気で殺しにかかってくるらしい。そりゃあそうだよね、だって呪いだもん。
戯れとはいえ背中なんて見せちゃって、大丈夫なんだろうか。

(・・・ん、でも案外優しいし・・・気持ちいいかも。)

宿儺の手は器用に動き、私の肩を解していく。掌が暖かいので、なんだか血の巡りもよくなってきた気がする。

「ありがとう、もういいよ。」
「何を言っている、少し掴めてきた所だというのに。」
「今度は私がやってあげるよ。」

ちょっと油断して、仏心のようなものを出してしまったのが、間違いだった。

「ほう、なら次は俺の番だな。王は。」
「・・・あれ、それまだ続いてたの?」
「当然だろう。」

王様ゲームの体験はまだ続いていたらしく、宿儺は私の手から「王」の棒を奪い取った。

「俺の命令は・・・そうだな、一分間目を閉じていろ。」
「え、やだ。」
「王の命だぞ、絶対なのだろう?」
「・・・何をするのか、聞いてもイイデスカ。」
「危害は加えん。約束しよう。」
「・・・すっごく不安なんですけど。」
「・・・お前は、俺にとことん信用がないようだ。」

半眼で睨んでも、半眼で返される。信用なんて、するポイントどこにあるんだ。それでも宿儺は「王」の棒をひらひら見せつけてきて、仕方がないので従うことにした。

「じゃあ閉じるよ・・・ちゃんと一分、数えてよね。」
「ああ。待て、此方に体を向けろ。」
「ええー?命令はひとつだよ。」

しぶしぶ体の向きを変え、なんとはなしに正座をする。宿儺は満足そうにカウントダウンを開始した。っていうか、距離感が近すぎる。この人は、出会ってからずっと近い。今だって相変わらず足の間だし、なんとなく距離を取り辛い。

「始め。」
「・・・」

何をするつもりなんだろう。
瞼の裏で色んな想像をしていると、不意に唇に何かが当たった。

「?」
「おい、目を開けるな。数え直しだ。」

すぐ目の前に、入れ墨だらけの宿儺の顔。ベースは虎杖くんだけど、顔つきや纏う雰囲気が全然違う。
その距離本当に1センチくらいで、私はしばし思考停止してしまった。

「目を閉じていろ。」
「え、まって、今」
「閉じぬのなら、塞いでやる。」

しゅる、と宿儺の襟巻が目元に巻かれる。決して強くではないけれど、それでも私は整理できていない状況と思考のまま、余計混乱してしまった。今の、今のって。キスじゃなかった?

「すく・・・んっ」
「一分だ。大人しくせぬと、極刑にするぞ。」

ゼロ距離で聞こえた楽しそうな声は、確実に私の唇に触れて響いている。宿儺が唇を開かせて、すぐにぬるりと何かが侵入してきた。

「んぐ、」

長く熱い舌。宿儺は私の後頭部をしっかりと抑え、唇ごと口内を蹂躙する。めちゃくちゃに吸われて、噛まれて、強張っていた体がびくりと跳ねた。脳髄に甘い痺れが走る。

「っぷは、やめ・・・す、くな・・・!」

手で肩を押し返すも、力で敵うはずがない。私は目隠しをなんとか毟り取って、宿儺のキスから逃れようと体を捩った。

「また目を開けたな、くく・・・」
「や、違う・・・!待って、キスは・・・ダメ、だって、んっ」

ひどく楽しそうな宿儺の顔は、どんどん男の色を帯びている。獲物を狩るような、強くて激しい雄の光。私の両手首を簡単に捉えて、また顔を近づけてくる。舌をちろりと出して、見せつけるように。

「宿儺、ちょっと・・・!」
「駄目だ、諦めろ。」

がぶり、と食べられるように、大きな口を開けて、迫る宿儺。あっさりと逃げ場を奪われた私は、また宿儺の腕の中に納まってしまった。強く抱きしめられて、何度も何度も降ってくるキス。野性的で乱暴で、私の思考はどんどん奪われる。
思わず零れた涙で、視界も機能していない。

「良い顔をする・・・さあ、観念して口を開けろ。」
「っふ、うう・・・嫌・・・あ、」
「嫌か?俺と唇を交わすのは。」

少ししゅんとしたように見えて、意図せず私の心臓がどきりと鳴る。いつも高圧的な宿儺の眉がほんの少し下がっただけで、私はなんとこいつに甘いんだろう。油断したその隙を逃さず、宿儺の唇は私の耳に寄せられた。
ちゅ、とリップ音が聞こえて、腰のあたりがぞくりと粟立つ。

「俺は心地いいがな。本当に嫌なら、止めてやらんでもないぞ?」
「・・・っくそぉ・・・バカ宿儺・・・!」
「ほれ、男女で触れあう戯れなのだろう?もっと触れさせろ。」
「セクハラ呪物め・・・!!」

弱弱しい抵抗空しく、私は宿儺の胡坐の上に座らされた。また乱暴なキスが来ると思って目を瞑っていると、不意に額をこつんと合わせてきて、それが可愛いと思ってしまったり。ぐちゃぐちゃな思考で、潤む目を少し開けてみた。

「シズク」
「・・・」
「俺のものになれ。」

宿儺は低い声で、私の目を覗き込んで囁いた。

「・・・命令ですか。」
「・・・くく、そうだな。王の命だ。」
「・・・セクハラじゃない。訂正する。あんたはパワハラ呪物よ・・・。」
「何を言っているのか解らんな。さあ、降伏しろ。」

不覚にもときめいてしまった時点で、自分の気持ちには気づいていた。
私を掴んで離さない、この横柄な男に惹かれていること。

「・・・ゲームは終わり?」
「ああ。俺はげえむが終わっても王だからな。」
「インチキ過ぎる・・・!」
「お前が浅はかなのだ。」

もうすぐ唇が触れるくらいの距離で、宿儺はまだ話し続ける。声で震えた息が届く。頭がぼうっとして、ゆったりと口づけられてももう体は跳ねなかった。ゆっくりと唇を割って入ってくる舌に、身を任せる。

「ん」
「応えぬのなら、勝手に進めるぞ。」
「・・・もう、止める気ないくせに・・・っ」
「ほう、よく解っているではないか。」

するすると手が伸びて、頬、項、背中を通って体を撫でていく。シャツをすり抜けて素肌に触れたとき、少しだけ体が緊張した。
宿儺が触れる所が、どこもかしこも熱くて堪らない。じんじんと痺れる頭も、甘く疼く体も、自分のものじゃないみたいだ。

「ここは好きか」
「っひ」

無遠慮にブラをずらされて、シャツの中で乳房をすっぽり包まれる。長い爪が肌を傷つけないように、やわやわとした手つき。布地も指も、通り過ぎるように乳首に触れるのがもどかしい。腰をくねらせ耐えていると、きゅっと先を摘ままれた。

「小さいくせに、生意気に勃っていやがる・・・」
「んっ、あ・・・や、」
「捏ねるのが好いか、それともこうか?・・・ヒヒ、食らってやろうか。」

宿儺は乳首を責めながら妖艶に笑うと、シャツを乱暴にたくし上げて胸をさらけ出させた。赤く充血した先端のすぐ近くで舌をちろりと出して、私の顔を見上げている。
恥ずかしくて顔を背けた瞬間、胸に噛みつかれた。

「んんっ」
「ほう、いい反応だ。こんな事も出来るぞ。」

宿儺は胸を食みながら、右手の掌を見せてきた。

「ん、なに・・・っきゃあ!」

その掌に、小さ目サイズの目と口が現れる。以前に虎杖くんの体で見たことがあるやつ。宿儺は口の生えた手を、もう片方の乳房に這わせてきた。とんでもない刺激が、私を襲う。

「や、ああっ」
「両方なんて、贅沢だなぁ?シズク」
「やめ、嫌・・・っす、く」
「ほら、頑張れ。胸だけで気を遣るつもりか?」

びくびくと跳ねる体が、もういうことを聞かない。宿儺は本体の口の方では優しく舌を這わせ、手のひらの方で軽く嚙んでいる。じゅる、と十分に濡れた音が聞こえて、吸い立てられて目の前が明滅した。

「っふ、も・・・ゆる、して」
「んん?好いぞ。もう俺を受け入れたいのだな。よし」
「ぅえ、待って・・・や、何それ!」
「ケヒヒ・・・さあ、泣いて見せろ。」

宿儺がさっさと取り出したものは、私の想像をはるかに超えるサイズだった。凶悪過ぎて、血の気が引く。逃げ腰になっていると、あっさりと腰を掴まれて持ち上げられた。ジーンズを脱がされて、その奥で濡れてきていた布をはぎ取られる。
ねとりと気持ち悪く糸を引くパンツを、宿儺はわざと私に見せつけた。

「準備はいいようだな。」
「っく・・・そ、やだぁ・・・初めてなのにぃ・・・」
「ほう?俺のために取っておいたか。褒めてやるぞ。」
「誰が・・・!っひぃ!」

ぬる、と充てられた質量は思っているよりもずっと熱く、煮えたぎるように感じた。さんざん嬲られて潤ってしまっているそこは、宿儺を欲しがって勝手に泣いている。

「良くしてやる。・・・委ねろ。」
「んっ・・・ううっ、ひ、あぁ!」

始めに圧倒的な存在感。それから少しして、焼けるような痛みが来た。悲鳴を漏らすと、宿儺は押進む速度を落としてくれたように感じる。ず、ず、と確かに、それでもできるだけゆっくりと、体を割って宿儺が入ってきた。

「・・・っ、息を、吐け。シズク」
「い、たいぃ・・・っ、は、う・・・っ」
「・・・はぁ、仕方あるまい、」

ぐい、と顎を引かれて、深いキスが下りてきた。舌を掬われ、歯列をなぞる。酸素を求めてもがくけど、宿儺の舌はしつこく追いかけてくる。涙がこぼれるころ、諦めてその肩にしがみついてキスに応えた。

「っん、ふ・・、ぅ、んんっ、」
「シズク」
「・・・っす、く・・・な、くるし、」
「解るか、少しだけ緩んで俺を受け入れている。・・・才能があるな、ヒヒ」
「ン、あっ・・・ば、か・・・あ!」

ぐり、と回すような動きに合わせて、快感が芽生えた。きつく抱きしめてくる宿儺の体温が気持ちいい。繋がっているところから、痛みと別に甘い快感が湧き上がってくる。器用にキスと胸も同時に責めてくるので、もう訳がわからない。だんだんと進んできた宿儺自身をすべて受け入れるのに、それからそう時間はかからなかった。

「・・・粗方、収まったぞ。見てみろ。」
「やあ・・・!恥ずか、しっ・・・んん!」
「恥ずかしい?こんなに溢れさせておいてか?」

ゆらゆらと腰を揺らされると、結合部から確かに水の音が聞こえる。余裕の生まれた私の中が、動いてほしいと泣いているのがわかる。私も、もっと欲しくなっている。めちゃくちゃにしてほしい、奥まで犯してほしいと思い始めていた。

「っや、も・・・だめ、ぇ、宿儺・・・欲し・・・!」

懇願の声と共に、大きな涙がこぼれた。その涙を見て、宿儺がとんでもないサディスティックな笑顔を浮かべている。

「どうして欲しいか、言ってみろ。」
「・・・っい、じわる・・・!」
「このまま緩くこすり上げても良いのだぞ・・・?」

耳元に響く、甘く低い声に体が震える。わざと色っぽく言っているのがわかるのに、どうしようもなく反応していた。私は観念し、宿儺に顔を見られないようにぎゅっと抱き着いた。

「う、ごいて・・・動いて、宿儺・・・!痛く、してもいい・・からっ」
「・・・ケヒ、いい子だ。溺れさせてやろう。」
「・・・っひ、うああ!んぁ、ううっ!」

ずぷ、と深い動きが始まった。体の奥、誰にも触られたことのない場所が、宿儺に突かれて喜んでいる。強い快楽に意識が飛びそうで、私は必死に宿儺の首元にしがみついた。
宿儺は私を翻弄しながら、抱きしめたり、キスを落としたり、とにかく感じさせてくる。

「すく、な、怖・・・い、んんっ、あ、」
「怖い・・・?」

片眉を持ち上げて、私を揺さぶる手を止めずに聞き返してくる。うわごとのような言葉だったが、宿儺にはきちんと届いていたらしい。

「き、もち、よくて・・・っ、怖い、の・・・んっ」
「・・・ヒヒ、俺を欲情させるのが上手いな、お前は。」
「あっ、やぁ・・・そこ、だめ・・っん!」
「初物のくせに大した善がり様だ。このままめちゃくちゃにして、俺から離れぬように躾けてやろう・・・どれ、ここか?痺れるほど感じるだろう?」

ぐりぐり、と奥を開かれて、自分でも聞いたことのない高い声がこぼれた。私の体は裂けていないだろうか。快感が強すぎて、思考がまとまらない。

「んぁ、あ・・・っ、やだ、なんか・・・変・・っっ!」
「そろそろか。ほれ、我慢するな。委ねろと言っただろう。」

リズミカルに突き上げる動きに合わせて、何かがはじけそうな感覚が湧き上がってきた。目の前がチカチカして、背中にビリビリと電流が走る。

「イけ。」
「うあぁっ・・・・んんんーーーっ・・・!!」

耳元で囁かれた直後、一番奥を深く貫かれた。そのまま私は四肢をぴんと伸ばして、長い嬌声を上げてイってしまった。息が途切れて、はくはくと開閉する唇。自分の体じゃないように、いうことを聞かない。

「上手じゃないか。・・・ほら、俺はまだ終わってないぞ。頑張れ頑張れ。」
「っひ、や・・・だめ、まだ・・あ・っ変、だから・・・ぁあ!」
「一度で終わる訳なかろう。今度は後ろからだ。」

痙攣を続ける体をころんと反転させられ、四つん這いになる。その間も宿儺は私から引き抜いてくれなくて、また違う場所を擦られて背中が撓った。

「んあぁ・・っ、や、そこ・・・」
「獣のようだなァ、シズク?」
「やぁぁ・・・!」

宿儺はさっきより数段早く、私の中を出入りし始めた。強く腰を打ち付ける度、乾いた音がぱんぱんと響く。私は宿儺の動きに耐えられなくて、体勢を何度も崩された。

「ん、ぐぅっ・・・!あ、深いぃ・・・!やぁ、」
「ちゃんと手を付いてもいられぬのか?・・・ならば、ほら、掴んでいてやるぞ。」
「ひぁっ」

ぐい、と後ろから両腕を掴まれ、上半身が空中に浮いた。深すぎる律動が始まり、喉がひゅ、と鳴る。こんなの、本当に獣みたいだ。ばつんばつんと乱暴に突かれて、悲鳴に似た声が漏れる。

「ああ・・・大分馴染んできたな。」
「う、ああっ」
「そろそろ注いでやろう。零すなよ・・・」

少しだけ余裕のない声。宿儺はスピードを上げて、私の上半身を後ろから抱きすくめた。どこまで入ってくるつもりなのか、先刻からずっと、奥深くばかりを責められている。行き止まりであろう場所も遠慮なく抉ってくる。私にも、また絶頂が迫ってきていた。

「ん、ううっ・・・ん!あ、すく、また・・・っい、」
「・・・ああ、共に、」

ぐ、と強く抱きしめられて、宿儺の陰茎が私の中で吐精した。脈打つそれに合わせて、私にも絶頂がやってきた。

「ひ、ああ・・・・や、いく・・・い・・・っ!!!」
「・・・ん、・・・っ」

長い射精をすべて私に注ぎ込んで、宿儺はそれからしばらくじっとしていた。私の肩に顔を埋めて、珍しく黙っている。

「・・・っは、う・・・」

私は整わない息を繰り返し、お腹の中に感じる宿儺の体温が抜けるのを待つ。これが噂に聞く、賢者タイムなのかな。そんなことを考える余裕ができるまで、優に数分を要した。

「・・・す、宿儺・・・そろそろ、」
「ん?なんだ。」
「あの・・・抜いて、欲しいなって」
「なぜだ?」

心底不思議そうな声が返ってくる。あれ?おかしいな、終わった後って普通抜くよね?混乱していると、宿儺の声がいつも通りの意地悪な響きを含む。

「誰がこれで終いだと言った?」
「・・・え、」
「次はお前が上に乗る番だ。ほれ、寝具を用意したぞ。」
「ちょ、待って」

宿儺はいつの間にかマットレスのようなものを出して、そこに私ごと移動した。ぼふんと寝転がり、私を上に乗せたまま腕を組む。にやりと見上げる顔が、心の底から憎らしかった。

「ほれ、動け。」
「いや・・・あの、私・・・今、処女喪失したばっかなんですけど・・・。」
「なんだ?出来ぬのなら下から小突いてやろうか。」
「っあ、ちょっと待って、やあっんん!」

嫌がる私をよそに、第二ラウンドが始まる。




特級呪物は、性欲も特級らしかった。









終。


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