6
夜が明けて、次の日。
「行ってくる」
ダリルは早朝のうちに出発の準備を済ませ、周囲を確認してからベスに告げた。
「気を付けてね。」
「・・・」
シズクは何を言うべきか分からず、扉を抜けていく大きな背中を見送った。
ベスと2人、彼のいなくなった入り口を簡単に塞ぐ。
女ふたりの力では、あまり大きなバリケードは築けなかった。
「ふう、これでOK。あ、シズク、武器を返すわ。」
「・・・いいの?」
ベスはさらりとナイフを渡してきたが、シズクはすぐに受け取ろうとしなかった。
危険を考慮していないのか、ダリルは許したのか。
「私も、あなたがいいひとなのが分かる。だから返す。もしウォーカーが入ってきて、武器がなくちゃ困るでしょう?」
「それは、そう・・・だけど。」
「受け取って。あなたのものだもの。」
「・・・。」
おず、と手を伸ばせば、ベスはその手を取ってナイフを握らせた。鞘もカバーもない、血塗られて錆びたナイフ。
これがシズクの生命線で、これからもそうだ。
武器を返してもらった安堵よりも、ベスの天真爛漫さが心配になった。
「あの、人は?」
「好きにしろと言ってた。だから、こうしたのよ。」
ウインク交じりに、笑って見せる。
「シズク、この世界では色んな悲しみが起こる。それぞれに、公平にね。
それでも、私は自分の『人を見る目』を信じるわ。誰も信じられなくなったら、おしまいだもの。」
それに、とベスは続ける。
「最初のころ、ダリルは信用できなかった。怒ってばかりでね。」
今はこんなにも、頼りにしてる。
そう続けたベスの顔は、聞いていた年齢以上に、大人びて見えた。
「それで今日まで生きているんだから、私の『目』もなかなかのものじゃない?」
「・・・ふっ、」
キュートな笑顔を、シズクも信じてみようと思った。
ダリルが帰るまでの間、彼女を守りたい、とも。
「あ、初めて笑った!」
「ベス・・・あなたには、かなわない。」
笑いあうシズクとベスは、協力して周囲を見張ることにした。
ダリルが戻るまでの間、何もないことを願って。
‐−
昼をちょうど過ぎるころ。
ダリルは膨れたバッグと、何匹かのリスをぶら下げて戻ってきた。
小屋の扉に身を寄せた彼は、小さな声でベスを呼んだ。
「俺だ。」
「今開ける」
簡易バリケードを外し、ダリルを迎え入れる。
シズクの手にナイフがあるのを一瞥し、すぐに視線を外した。
彼もまた、ベスを信じているのだろう。
シズクはなるべくまっすぐにダリルを見て、不審に思われないように努めた。
「何もなかったか?」
「ええ、とても静かだったわ。」
「・・・」
「そりゃよかった。注文の品だ、確認してくれ。」
バッグの中身を床に開け、ひとつひとつベスと確認していく。
横に分けられた衛生品などは、シズクに使う予定のものだろう。
「あの・・・ありがとう、ございます。」