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「あーあ、なんで日本は一夫多妻制ってのがねーのかなー?」

「…不道徳やからじゃないっすか?」

「どーなんかなー…あー」

「ビールっすか?」

「おう、それ。さすが健二郎」

「ビール忘れるとか…ククッ」

「こらー先輩を笑うなー」

「ふははっ、すんません」



全然謝る気ねーじゃん
まぁいいや、健二郎だし





そっから小一時間飲んで
お互い目をシパシパさせてて
そろそろお開きにするかと言って
伝票を手に取った



タクシーが来るまでまた女の話をする
こんな狭い個室でしか出来ないからな
事務所で話せば白い目で見られることは必須

つかこんな話ケンチにも啓司にも話したことねぇや。てっちゃんの節操無しとか言われそうだし怒られそうだし、それに後輩とかは俺の事優しくて良い人で通ってるからそれを崩したくないし…あれ?なんで俺、健二郎にこんな話してんだっけ?


…あぁ、あれだ。前に俺がボロっと言っちまったんだ。やべぇって思ったけど案外普通の顔で接する健二郎につい気を許してそっから話すようになったんだ


酒を飲んで真っ赤になりながら健二郎はスマホを手に取って、多分インスタかなんか見てるんだろうか…チラッと見えたのは魚の写真。んだよ、女とかじゃなくて魚かよ、らしいけどなんだかなー…


「健二郎」

「はい」

「お前女いねぇの?」

「、え?」


ピタッと止まる手を見て
おっこれはもしかしてと思い詰めよった


「え?いんの?その反応いるだろ!」

「ち、違いますよ!い、いないっす!」

「ほぉ…先輩に嘘つくか」

「ほ、ホントっすよ!か…片想い…ちゅ、うです」

「おー!!まじかー!」


明らかに更に赤くなる顔にニヤニヤしながら目を向ければ、ちょっとむくれた顔でスマホをテーブルに置いた


「どんな子ー?可愛い?ヒロさん知ってる?」

「…別に、可愛いとかじゃなくて…ヒロさんは知りません」

「ほーほー、写真ねぇの?」

「ないっすよ…あぁタクシー着ましたよ!帰りましょ!」

「あ、待って健二郎…立てない」

「え?」

「足がふらつく、肩貸して」

「…もぉーテツヤさんしょうがないっすね」

「先輩の面倒は後輩が見る!…つーわけでお家まで運んでー」

「…普通逆やと思います」

「いーのいーの、早くー」

「…はいはい」



肩を借りてタクシーに乗り込む。行き先を伝えて1分もしない内に眠くなる体。ほら、タクシーってなんか眠くなるじゃん?ウトウトし始めると健二郎が寝てていいっすよって言うからお言葉に甘えようって思って目を閉じる。健二郎の肩を枕にして呼吸をすると酒に混じって健二郎の香水の匂いが鼻を掠める。ちょーいい匂い…これ…どこのだろ…俺も…ほし…



落ち着く匂いに気づけば
俺は眠りについていた





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