苗字名前です。忍足謙也くん目当てにテニス部のマネージャーになった苗字名前です。ごめんなさい、不純な動機で本当にごめんなさい。不純な動機で入ってしまったからこそ、マネージャーの業務に凄く精を出しているわけでありますが、ここで問題点が1つ。

「……退いてくれませんかね」
「嫌ですわ。あー、ほら、名前先輩とツーショット」

私の背中にやたら重たいものがのしかかり、更にはスマホの画面が出される。そのスマホの画面には私と財前くんがきっちりと映っていてそれに気付いたと思ったらシャッター音が鳴り響いた。

「財前くん、練習中でしょ?」
「そうですけど。名前先輩居ったんで今は休憩中です」
「私が居ったんでって、どういう理屈?早く戻らないと練習量倍にするよ?」
「おー怖。可愛い顔してこない怖いこと言わんでや。」

からかってる。絶対からかっている。
自慢ではないが私はテニス部の鬼マネージャーとしても有名だ。そのおかげで全国まで行けたとか、サボっている人間を見付けたらとっちめられるとか、そんな噂も流れているみたいだけど、全国まで行けたのは白石くんたちの指導もあったからだし、サボっている人間を見付けて怒るのは皆そうではないのか、と思う。でも練習をせずに漫才ばかりしていると流石の私も怒る、けど…そんなに怖くはないはず。
以前、全国大会で気合いを入れるために部員全員にハリセンでお尻を思い切り叩いたのは他の学校のテニス部にも、それを見て居た全く関係のない人にも、ファンの女の子たちにもドン引きされた。っていうかケツ叩けって言ったの白石くんだし。そのおかげか怖い人、というレッテルを貼られ、ファンたちにいじめられることもなく平和に過ごしていたわけなんだけど、その日を境に突然、この後輩である財前光は私に纏わりつき始めたのだ。ハリセンでしばかれて目覚めたとか言われ始めている。やめてよ、何なの財前くん、ドMなの。他の後輩には名前お姉さまとか言われて叩いて欲しいと頼まれたこともあった。本当やめて。不純な動機で入部したことを謝るから本当やめて。

「ねー、先輩。」
「何よ」
「先輩、謙也さんのこと好きなんでしょ?」
「ブフォッ!!」

財前くんに耳元で囁かれたのと自分の隠していた本心をズバリと言い当てられ、思わず噴き出した。そんな私を見て財前くんはニヤニヤと笑う。こいつ、弱み握ったみたいな顔しやがって…!

「丸分かりですわ。このこと、謙也さんに伝えてきます」
「わー!何で何で!何でそうなったの!」
「だって名前先輩がちっとも俺のこと見てくれないんで」

さらりと爆弾告白みたいなことをした財前くん。しかし彼の手に握られているのはスマホで、彼はスマホと話をしている。いやいやいや、あんまり告白されたようにも思えないけど画面見ながら人と話すのは止めましょう。
そう思っていると私のポケットに入っているスマホがピロン、と音を立て、それと同時に財前くんがスマホの画面を私に見せてくる。それはLINEの画面で、宛先はテニス部のグループ…なになに?名前先輩と付き合い始めましたー!…って。な、

「何これェエ!?」
「そういうわけなんで、よろしくお願いしますね、先輩」

ニヤリと不敵に笑う財前くんを見て、私はただただ項垂れるばかりだった。


「これ、マジかな?」
「マジちゃう?財前こんな冗談嫌いやろ?」
「……そうかあ…ああ…苗字さん、結構ええなって思てたんに…」

謙也くんと白石くんの会話を私は知らない。



end...


長編と迷ったけどたちまちは短編で( ´・ω・)o