どうもこんにちは。白石蔵ノ介です。俺は今、とてつもなく悩んどります。それは彼女の名前のことです。今日も相変わらず俺は彼女のことが好きで授業中も自分の席から彼女を見つめてるわけですが、彼女の視線が彼氏である俺ではなく、俺の友だちで共にテニス部で全国大会を戦った忍足謙也にあります。めちゃめちゃ恍惚な表情でうっとりと謙也のこと見つめとります。頬も赤いです。……いやいやいやいや、アカンやろ!何で!?普通俺の方見てそうなるもんやん!?何で謙也!? 「はあ、忍足くん……」 あ、アカン。ホンマにアカン。謙也の名前呼んだ。しかもめっちゃエロくて可愛い声で。名前の声のトーンが1つ上がった。吐息も何やエロい。俺の息子が勃ってまうほどエロい。あ、すんません、何でもないです。 そうこうしている間に名前が席を立ちました。向かう先は俺やなくて謙也のとこです。おかしいって!何で俺んとこ来てくれんの!? 「忍足くん。」 「ん?どうしたん?」 「えっとね、忍足くんだったら…好きな人とどこに行きたい…?」 「え!?それって白石とのデートコースの参考?それなら俺より白石に聞いた方が…」 「蔵ノ介のデートコースは聞き飽きた。忍足くんのが知りたいな。…だめ?」 唐突に名前に質問をされて戸惑う謙也。名前は引かずにデートコースを問う。っていうか俺のデートコースは聞き飽きたとか…酷ない?植物園とか植物園とか植物園とか…毒草の良さについて昨日あれほど語ったところやったのに…!…いや、待てよ。もしかしたら俺と何処かに出掛けるために聞いてくれとんかもしれん。そう思ったら今まで以上に名前に対する愛しさが増してこのまま駆け出して抱き締めたい衝動に駆られる。 「勿論ええで!せやなー…俺ならユニバ行きたいかな。」 「なるほど!ユニバいいよね!はぐれないように手も繋げるし…!」 「ははっ、そこまで計算しとんかいな。お前も白石みたいなやっちゃなー。」 手も繋げる…!名前、いつも照れとるけどホンマは手、繋げて嬉しかってんな…!思わず頬が緩んでニヤニヤしていると名前が俺に気付いた。俺の方を見た名前は頬を赤くしてふにゃふにゃと笑い、小さく手を振って席に着いた。何なん何なん何なん!あの可愛い顔!反則やろ! そんな名前を見せてくれるキッカケを作った謙也に感謝を表すために俺は謙也に近付く。 「謙也、おおきにな?」 「はあ?何がや」 「名前にデートコース、アドバイスしてたやん?」 「アドバイスっちゅーか、アイツが聞いてきただけやで?それにしても相変わらずラブラブでんな〜」 うりうり、と謙也が俺を肘で突付く。俺は頬を赤くしてからかうなや、と言って謙也の首の後ろに手回していつものようにじゃれ始めた。頬を指で突付いたり、ひよこ頭をわしわしと撫でたり。謙也も止めいや〜なんて言ってノッてくれとる。そこでまた視線を感じ、顔を上げるとそこには恍惚な笑みを浮かべた名前の顔が……。この状況とその表情で俺は全てを悟った。俺は慌てて謙也から離れ、名前の元に向かう。 「名前、ちょっと来い。」 「え!?だ、ダメよ蔵ノ介…!貴方には忍足くんという人が…!」 「やっぱりな!そないなことやと思ったわ!」 俺は名前の手を引いて教室を出て近くの空き教室に名前を連れ込む。連れ込んだ勢いでそのまま壁に名前の背中を押し付けた。そんな状況でも名前はどこか楽しむように目は笑ったまま俺を見る。 「名前…お前なあ、俺と謙也で如何わしいこと妄想しとったやろ!」 「妄想じゃありません、想像です。」 「現実に起こりえへんことは妄想や!」 「そうだよ?だから想像です!」 「おい!俺お前の彼氏!」 そう。もうお気付きの方も多いと思うが、名前は俺とのデートコースを謙也に聞いたのではなく、俺と謙也のデートコースを聞いてたんや。手を繋ぐ、というのだって俺と名前やない、俺と謙也や。最初に謙也を見て恍惚な笑みになっとったんは…あんまり考えたないけど俺と謙也のヤりよるとこでも妄想して1人ぐふぐふ言うとったんやろ。ほんで極めつけはさっき。俺と謙也のじゃれ合いを見て心底幸せそうな顔しとった。あの顔はいつも何かを妄想する時の顔。俺には分かる。名前のことずっと好きで見ていたから。 「何言ってるの!貴方は忍足くんの彼氏でしょう!?」 「それお前の頭の中の設定や!現実はちゃう!」 「あれ?そうなの?」 呆ける彼女に俺は失笑し、軽く額を小突いてから不意打ちでキスしてやった。するとみるみる名前の頬が別の意味で赤くなり口元を両手で覆うもんだからホンマにかわええ。 「俺がこうしたいんは謙也やない。名前だけや。」 「蔵ノ介…」 謙也とはこうしたいと思わんもんな。 「ちょ、ちょっとでいいから忍足くんと蔵ノ介のキスシーンを…!」 「まだ何か言うとる!」 こんな彼女でも大好きです。俺だけが知ってる彼女で、他の男は知らない本当の名前なんです。 |