♭ 白石くんと百味ビーンズ 「蔵ノ介〜、これ、友だちがユニバに行ったお土産やねん。食べてみてや〜」 「……これ、あのハリポタの百味ビーンズんやないか。」 「なあんだ、知ってるん?」 仕事から帰って早々、俺の嫁の名前はニヤニヤと笑いながら空パケに5つの百味ビーンズを入れて俺の目の前でチラつかせた。中にはオレンジ色、黄色、黄緑色、茶色、ピンクのカラフルと…何とも言えない色が揃っとる。見た目だけで健康にむっちゃ悪そうや。 ネクタイを緩めて差し出されるがままに俺は百味ビーンズを睨んだ。 「どれから食べる?」 「……ほな、ピンク…。」 はい、と名前に渡されるごっついピンクに赤やら青やらのカラフルな色の付いたビーンズを口にする。甘くて美味い。聞けば果物か何かの砂糖漬けの味らしい。その後の黄色もレモンの味がして美味かった。あれ、これ意外とイケるんちゃうん?そう思って次に口にした黄緑色。 「……何やねんコレ…。草みたいな味するわ…」 「ぶふっ!それヤバいよね!私も出したもん!」 「はあ?お前出したん?勿体無いことしよって…あ、これ後半イケるんちゃう?でもやっぱ不味いわ。ちゅーかこれ何味?草味?」 「それねえ、鼻くそ。」 はあ!?鼻くそとかまず食うもんとちゃうやん!噛んでいく内になかなか美味いかもと思ったけどまた草のような苦味が口の中を支配して何とも言えない味が俺の口内を付き纏う。これ、ビーンズやからアカンねん、歯にまでくっついとるし…。続けてオレンジ色のも口にしたけどさっきの鼻くそのせいで味がよく分からんかった。ゲロ味やって。 「ゲロもなかなかの味や思てんけど。」 「鼻くそ食うてなかったらヤバかったかもしれん」 ゲロ味のビーンズを食べる俺をつまらなさそうに見る名前。どういうリアクションして欲しいねん。悪いけど俺は謙也みたいにはならへんで。 眉根を寄せながらビーンズを口にする俺に、名前は物凄い笑顔で最後の1つの茶色のビーンズを渡してくる。な、何やねんその笑顔…。これ、チョコレート味とかとちゃう?ま、まさかウンコとかやあらへんよな…?そんな俺の考えが名前に伝わったんか、ウンコやないで。と言った。流石4年夫婦でおるだけのことはあるわ。俺の考えとること、分かってくれとる。 俺は意を決して茶色いビーンズを口にする。さっきの鼻くそも強烈やったけど、それ以上に強烈な湿っぽい…何とも言えん味が口の中に広がった。茶色いビーンズにダメージを受けたんは俺だけやない。名前もやった。 「クッサ!!ホンマくっさい!!ちょ、蔵ノ介、近寄らんといて!」 「何やねん、食わしたん名前やん!」 「ちょ、喋んなやホンマ臭い!!」 名前の反応に思わず俺は噴き出し、名前の両肩を掴む。俺のしようとしとることは名前も気付いたようでいやいやと首を横に振った。 「近寄んなや!ホンマ臭いねんて!!」 「つれへんなあ、食わしたんは名前やろ?チューしよや。めっちゃ名前とチューしたいねん。」 「私はしたない!嫌あああ!!ホンマくさっ…!!」 勿論、名前がぐったりとするまでキスしたった。俺らは夫婦やねんから痛み分けせなアカンやろ? end |