石くんを地獄に落とす



いつだっただろうか。蔵ノ介があの子を目で追い始めたのは。いつから蔵ノ介は私から距離を置いたのだろうか。ずっと蔵ノ介を追っていた私には分かる。それは数ヶ月前のことだ。

「好きな子、出来てん」
「やっぱりなあ…。何となく分かるで?5組の青山さんやろ?」
「流石やなあ。俺のこと、何でも分かるんは名前くらいやわ」

当然のことを今更蔵ノ介は口にする。私はいつだって蔵ノ介を見ていた。蔵ノ介が笑う時も、泣いた時も、怒った時も、私は常に蔵ノ介の傍に居た。でもきっとそれがいけなかったのだ。

幼馴染みやと恋人…言うより家族と同じ感覚になんねん。家族なんて恋愛対象なんかにならへんやろ?

たまたま蔵ノ介が忍足くんに話していた言葉の一部だ。蔵ノ介ほどはモテない忍足くんが、女子の幼馴染みってええなって蔵ノ介に話した時に蔵ノ介が紡いだ言葉。
これほど蔵ノ介の幼馴染みという立場を恨んだことはなかった。蔵ノ介は私ではなく、同じ保健委員の青山さんを好きになってしまったのだ。

嫉妬に狂った私は特に復讐をしてやろうというわけでもなく、ただただ蔵ノ介を独り占めする方法を考えた。考えに考えて出した結論が、この有名な某サイトだった。夜中の0時。しかも怨念が篭もれば篭もるほど繋がりやすいという噂の…。

「……出た。」

あなたの怨み、晴らします。
そう書かれたサイトにようやく繋がった。私は迷わずそこに名前を打ち込んだ。


■□■


「白石のやつ、失踪やて…。何があったんやろな…」
「ホンマに…。蔵ノ介、何か悩んでたんやったら私に言うてくれたら良かったのに…!」

数日後、蔵ノ介と青山さんが付き合い出したという噂を聞き、その翌日に蔵ノ介は失踪した。手掛かりも何もない。
忍足くんの言葉に私はその場に蹲り、泣いた。
目から涙が溢れるというのに私は笑っていた。口元に浮かぶ笑みを隠すように私は蹲ることで膝で顔を隠した。
残されたのは蔵ノ介の私物、彼との思い出、そして蔵ノ介を愛した青山さん、慕っていた友人や後輩たち。それから……私の左の鎖骨の下に地獄行きの刻印。


待っていてね、蔵ノ介。
もうすぐ私も蔵ノ介に会いに地獄に行くから。

end

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地獄少女パロでした。