『聞こえない。聞こえない。 大丈夫、何も聞こえない。 ただ、うつ向いて。 目を瞑って。 足を右と左、交互に動かして。 そしたら家に帰れる。 大丈夫。 聞こえない。聞こえない。 聞きたくない。 コッチを見てアイツが笑ってる。 何を言ってるのか知りたくない。 大丈夫。 聞こえない。聞こえない。 知りたくない。 皆がコッチを見て笑ってる。 知らない。知らない。 聞きたくもない。 明日もきっと、良いことない。 でも、大丈夫。 うつ向いて、目を背けて、耳を塞いで。 そしたら、大丈夫。大丈夫』 踏切が鳴って閉まりかけている。 私は走って踏切に入って行った。 『大丈夫。怖くない』 太陽の光が、私の瞳に乱反射して、見えてる世界が痛いほど輝いた。