春の救世主

「長恭様っ」
当たり前のように涙が溢れた。
もう二度と会うことは叶わないと思っていたその人が、また、あの暖かい腕で妾のことを受け止めてくれた。だから、当然だろう。
信じられない、どうして、信じられようか。妾の最愛のその人とまた、会うことが叶うなんて。
「雨花、ですか?」
「はい、雨花に御座います。長恭様、お会いしとうございました」
思いきり抱きついて、腕にあらんかぎりの力を込めて武人にしては華奢な、それでも妾よりは硬くしっかりとした体を抱きしめる。
その人は妾の背に手を回し、昔と同じように、宥めるように、背を撫でていた。
溢れる涙が止まらなかった。
彼の胸元に思い切り顔を寄せ、妾よりも高い体温に身を委ねる。涙を流す時と言うのは上手く呼吸が出来なくなって、妙に苦しいけれど、欠片も気にならない。
ピタリとくっつけた耳に、とくんとくんと心臓の鼓動が届いて、背に回された腕のあたたかさを感じて、ああ、この人は、ここに、間違いなく居るのだと実感する。
「また、貴方に会えてよかった」
頭の上で囁かれたその言葉に、妾も、小さく頷いた。
貴方が居る、ただそれだけで十分だ。妾にはそれで、充分過ぎる。