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01

わたしは、自分が果たして人間であるのか確信が持てない。
今ここで呼吸をしているわたしは、いつか、どこかで生きていた人の、所詮は代わりでしかないのだと思う。人の形をしていても、肉体も、わたしという精神の全ても、かつて生きていた「わたし」の紛い物だ。
生暖かい水の中のような真っ暗な闇を漂っていたわたしが目が覚めた時、綺麗な男の子が二人、綺麗な目でこちらを覗き込んでいた。
その二揃いの目に、とても懐かしいものを覚えたのだと思う。よく、覚えてはいないけれど。
でも、それがわたしの、ナノの、一番はじめの記憶だ。

***

ずっと昔から胸中を渦巻いている、後暗い後悔というものがある。
わたしはいつも何も考えていない、とびきりの馬鹿だ。だから何もかも気付くのが遅くて、気付くのが遅いのだから行動も遅い。周りにはそれで、迷惑ばかりをかけてきたように思う。
わたしは、いつもいつも、あの時はああすれば良かった、ああしていたら今こんな事にはなっていなかっただろうに、どうしてあんなふうに行動してしまったんだろう、ということばかり考えている。
ユウと、そしてアルマと、三人で笑っていられたあの僅かな時間のことをずっとずっと、考えている。あの時、わたしがもっと馬鹿じゃなかったら、もしかしたら今ここにはアルマが居たかもしれない、なんて。
今、過去を悔いた所で多分何も変わらないし、それを振り返って、何がどうという訳でもない。後悔した所でわたしが差し出されたアルマの手を振り払ったという事実に変わりはないし、アルマがあの時、ユウに破壊されたという事実もまた揺らがない。
後悔は何も生まない。
それを嫌という程に分かっていて尚、わたしは起きてしまったかつての惨劇を、受け入れることができていないのだろう。
毎日のようにうじうじと悩んで、泣いて、喚いて、あの時を思い出している。
わたしはユウみたいにはなれなかった。
別になろうと思った訳ではないけれど、彼みたいに、真っ直ぐにはなれない。
ユウみたいに教団を恨むことも出来ない。彼が「あの人」と呼ぶ女性を探しているような、ただ一つの目的を、願いを、持つことも出来ない。彼のように強く在ることも、勿論出来なかった。
弱くて、甘ったれていて、考え無しで、とびきりの馬鹿。わたしの手札にあるものなんて、自分の体と、せいぜい、イノセンスくらいだろうか。そのイノセンスだって所詮はわたしの、ナノのものじゃあ、ないけれど。
毎日毎日、同じような事をうじうじと考えながら、過去のわたしが仕出かしてしまったことをただただ、後悔しながら、それでも何かしらの行動を起こすことなんて出来ずに、今日もわたしは、黒の教団のエクソシスト、出来損ないの第二使徒をやっている。