平和に行きましょう。

キミとボクの距離


 潮の香りが鼻を擽る船上で、私は何処までも続く地平線を見ていた。
 綺麗な色だ。と観賞に浸っていると、少し離れた所から声がしだした。

「ふぅ……」

 人がせっかくっと溜め息混じりにそちらに視線を移した。

 私が乗っている船は海賊船だ。そしてこの海賊団に入って一そろそろ週間が経つ頃だ。
 私はその中の一人との距離が、何処と無く他の皆とは違う、微妙な距離感がまだある事に気付いた。

 その人は掴み所が無く、何時もおちゃらけたフリをして話の核心をそらしたりする。


「あ……」

 今その人は私の目線の中で、あのお子ちゃまトリオと釣りをしているみたいだ。……まぁ偶々通りかかったナミにいつものセクハラ台詞を言い踵落としされたみたいだけど。
 うわ。……痛そ。

「……ふぅ」

 私は先程からただ持っていただけの本をパタリと閉じ、あのトリオとふわふわなアフロが揺れている彼の元へ足を運んだ。

「どぉ、釣れてる?」

 ヒールの音を甲板に響かせて近づいた私は、誰にとは言わず釣りをしている四人に聞いてみた。

「おぅ名前! いやァそれがよ、どんなに待っても釣れねェんだよ」

 一番に答えたルフィがやや落胆しながら話した。

「当たり前だ! お前が餌ほとんど食ってんだぞ!」
「ええー! 何してんだよルフィ!」

 そして鋭いツッコミのウソップに気づいていなかったらしいチョッパー。

「ルフィ……それじゃあ釣れないじゃない」

 そんな彼らに苦笑いを浮かべながら私は言った。
 そしてまだ一言も喋ってない彼にチラリと目線を向けた。

 あ、私を見てない。

 彼は自分自身骸骨だから目線なんて何処へ向けていても分からないっと思っているかも知れないが、私には分かってしまう。
 それは何故なのか分からない。ただ彼の……ブルックの事は何故か他の誰よりも分かってしまう。

「で、名前さっきから何持ってんだ?」
「え、あぁ」

 私はルフィに言われ此処に来る途中に貰ったものに目線を移した。

「これはサンジくんに3時のおやつで貰ったカップケーキとオレンジジュースよ」
「ええー! お前だけ狡いぞォ!」
「いやいや、私に言われても……」

 私はサンジくんの好意で貰っただけですから。

「おい! 野郎共、てめェらのはダイニングにあるよ」
「あ、サンジくん」

 ナイスタイミングで来たサンジくんに助けてもらった。

「ンだよ! 早く言えよ」

 うん。話を聞かなかったのは貴方ですと、言いたい所だがあのトリオは早々とダイニングへ行ってしまったので、残ったのは私とブルックだけ。

「あ、ブルックはダイニング行かないの?」

 と、口から出た言葉はそんな言葉で。

「あ、はい。私は釣り道具を片付けてから行こうかと……」

 そして、彼からの言葉も当たり前の言葉。

「あ、そっか。……うん」

 何時も私達はこんな会話しかしたことがない。

 当たり障りのない会話。
 まるで互いが距離を測りかねているような感じだ。

「名前さんこそ……それ、食べないのですか?」
「え?」

 いきなりかけられた声に少し肩をびくつかせた私だが、ブルックが何の事を言っているのか分かって、少し困ったような顔をして言ってみた。

「……食べるけど。っブルックと一緒に食べたかったからっ」

 この言葉は私にとってとても頑張った言葉だったと思う。
  わぁ、心臓の音が凄いなぁ。

「っ! ヨホホホ……貴女は本当に」
「ブルック……?」

 私の予想とは反対に意外と普通なブルックに私はきょとんとしながら、彼の返答を待った。

「ブルック……あ、あの」
「名前さん、貴女に是非聴いていただきたい曲があるのですが。この後お暇ですか?」
「うんっ!」


 こんなに素敵な返答は他にないだろう。

 彼と私の距離は霧が晴れるようにしてなくなっていくような気がした。



-END-

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