It is necessity,

「……明日からまた探さないと」

 午後11時、辺りは真っ暗で人っ子一人通らず寂れた路地に、私一人の声があたりに静かに響いた。
 だが実際の私も、ヘッドホンをつけ普段のロックテイストな曲からまた増し、ハードロックなんかを先ほどの当てつけの如く聞いているから本当に響いたのか分からない。

 私は先ほど短期アルバイトを辞めてきた。こんな私でも成人し幾年たっている立派な大人だ……見た目は。

 だが周りの友人は皆就職に就いたり、結婚したりしているのだが、私はそのどちらにもなれていない。それに私の場合短期アルバイトも長く続かず、たった数週間で辞めてしまうから面倒なのだ。まぁ今日辞めてきたアルバイトもその口だ。

「私には向いてないんだよ」

 それはまるで自分に言い聞かせているようだ。
 そんな私は誰もいない路地でも酷く滑稽に写っただろう。

「それにしても今日は誰もいないなぁ」

 家路へ急ぐ中いつもはまばらながらでもポツリポツリといる人達が、今日に限っていないことに気がついた。なんだこれ……気持ち悪い。瞬間的にそう思った。

「……ったく。ついてないねぇ、今日は」

 確かにその日は朝からついていなかった。
 目覚まし時計は電池がなかったというお約束な寝坊理由に、玄関のドアを開けようとした時、地味に痛い静電気が指先を攻撃した。そして店長には、まぁアルバイトは他にもいるしねっという殴ってやろうかと思う嫌味を言われ。極めつけにこのさみしい状態。

「……帰ったら久しぶり読もっかなぁ」

 もうそろそろ家が見えてきた所で、数年以上も片思いをしている紙の上の彼が登場する物語へと思いを馳せた。

「会いたいよ……スパンダム」

 その言葉が今の私の口癖になっている。

 そして家へやっと着き、また静電気がこないかビクビクしながら玄関のドアを開けた。

「……え!」

 だがその先に待っていたのは何時もの玄関ではなく、真暗な世界で、いつの間にかヘッドホンからのハードロックな音も聞こえなくなった。 そして私の記憶はここで一端途切れさせた。











「……こ、ここはどこ?」

 眠りから覚めるようにしてゆるゆると瞼を開けると、そこには木目が見えた。
 そしてそれはやけに近く、私は何かにもたれ掛かっているようにして座っていた。

「……っん」

 少しばかりだるい身体を起こせば其処はどこかの廊下で、しかもそれらの全てに木目があった。

「……誰の家?」

 そう呟いた私の声は壁達に吸い込まれた。
 それに気持ち悪くなった私は、眉を潜めると怠さの残った身体を立たし、誰か人がいないか探すことに決めた。




「……気持ち悪いな、ここ」

 しばらく歩き私は、この廊下が異常に揺れる事や暗くて窓がない事など、あり得ない事に気付いてしまい背中に嫌な汗がツーと通った。

「あ、ここ」

 そんな中に廊下に不釣り合いなくらいのでかさがある扉に出会った。

「ひ、人……いるかな?」

 暗い廊下を一度振り返り、視線を扉に戻すと震える指先でドアノブに触れると、滑るようにしてそれを掴み一瞬それが止まったかと思うとまたそれを回し扉を開けた。


「っ! え……?」
「ッダァァびっくりしたァア!! お前誰だァ?!」

 扉を開けて一瞬光が私の目に射したと思ったら、次に目に飛び込んで来たのは紫色だった。



to be continue…,

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