小さく肩をたたかれたかと思ったら、視界の端を海とも空とも似つかない青が揺れた。ああ真波かと、そう思って返事をするよりはやく、「ねえ」と吐息混じりの声が耳の内側に反響した。「教科書忘れちゃったから、見せて」耳元をくすぐるのは真波の声か、それともくるんとはねた髪の毛か。「委員長にバレたらめんどくさいしね〜」きゃらりと笑ってはなれた真波はいつも通りにマイペースを保っていて、私の心臓だけがはやくて、うるさい。「楽しいねえ、ナイショ話って。またしようね?」真波はまた、わらう。
『ただ近付きたいという理由で内容の無い話を内緒話みたいに耳元で話す』真波山岳