「オレ、先輩と会えなくなるの嫌だなあ」受験を控えた彼女にかけることばではないだろうけれど、それは真波山岳らしさのあふれるものだった。だけれどその奥をたどってみると、彼は私が無事志望校に合格して、卒業してしまうことを前提として話していることになる。はたして真波がそこまで考えているのかと問われればなんとも言えないのだが。「もー、なんでそんな顔するんですか?先輩はちゃんと合格しますって。ぜんぶじゃないけど、先輩が頑張ってるとこ見てたし」だからね、だいじょうぶ。真波のあたたかい両手で私の頬はつつまれて、上を向かされる。まばたきをした一瞬の間に唇が奪われて、私が目を開けたそこにはきゃらりと笑う真波がいた。「ありがと、真波」そのことばと一緒に真波は自分の腕に私を閉じ込めて「無事に帰ってきてね」なんて言うものだから、やっぱり彼はずれてるなあとおもった。だけれどそんな真波が私にとってはいちばんなのだ。


真波山岳と受験生