「私ね、たまに思っちゃうんだ。なにか才能があったらなって」参考書から顔を上げて、私は明王を見た。たとえば、明王にはサッカーがある。「お前のことだから、推薦で入れれば試験がいらないとか思ってんだろ」いとも簡単に私の心を見抜いてみせた明王。彼はスポーツ推薦で大学に入ったと聞いた。「まあ、俺はお前のそれも十分才能だと思うけどな」そう言って、私の右手の中指にできたペンだこを撫でた。つぎに明王が目を向けたのは、私の手元の参考書。それはずいぶんと使い古されて書き込みだらけだし、紙もよれて端は折れ曲がっている。「その努力が無駄になってたまるか」


24不動明王と受験生