オルガが死んだ。らしい。ぼくは、家族を守る盾となった広い背中が血に染まるのを、その溌剌とした色黒の肌から瑞々しさが失われるのを、この目で見てはいないから、これは夢なのだと、そうでなければ狂気か何かなのだと、思わずにはいられなかった。目の前が真っ暗になった。誇張表現でも何でもなく、本当に、真っ暗だった。気の抜けた曹達みたいな心地で、クリュセへと続く地下トンネルの果てを見つめる。
この、暗くて長いトンネルを抜けたら、オルガがいるんじゃないかと思った。たった一日会えずにいただけで既に懐かしさを感じさせる輪郭があって、いつものように眩しそうな表情で笑って、そうやって。
すべてをぼんやりと薄めていた暁の光が、やがて輪郭を浮かばせる。バルバトスと、そのコックピットに立つ三日月。オルガは、もういない。
「ありがとうユージン。我が儘を聞いてくれて」
「……本当に、行くんだな」
ぼくは頷く。目の前に立つ王様の椅子≠フ前に片膝をついた。
「ぼくは王様じゃあないけれど、きみの椅子に乗せてほしい」
死んだら、魂は在るべき場所に還ると言う。星になるにしろ、生まれ変わるにしろ、それがオルガの隣であれば良いと思った。
オルガの命日によせて