きみと繋ぎそびれた手のなかで思い出の残滓がくだけて、混じって輝くアスファルトの上を歩く。ひるに降り注いだ雨に濡れて張りついた桜の花びらもあいまって、つくりものの宇宙の上を歩いているようで、目の前がチカチカして、足元が覚束ない。呑み込まれてしまいそうだった。髪を撫でる夜の空気は暗く、しずかに淋れていて、祭の後みたいだ。
「じゃあ」
 手を振るコーヒーショップの前、名残惜しく立ち話もしなければ、次に会う約束もしなかった。あの頃の僕らはいない。帰りたくない気持ちはあの日とおなじままだって言ったら、きみはどんな顔をするだろう。からかわないで、って頬を膨らませるだろうか、想像して目を伏せる。網膜でむすんだ君は初々しい少女のままで、肩幅の合わないセーラー服を身に纏っていた。
 ありがとう、さようなら。次に会うときには、おとなになった君と僕で、シャッターを切ろう。


不二周助と同窓会の帰り道