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    むかしむかし、あるところに

    つがいの蛇がおりました。



    二匹の蛇はたいそう慈悲深くなおかつ気高く、まわりのものからも慕われておりました。



    長い長い年月が過ぎ去り、いつしか蛇は蛇王龍と呼ばれるようになりました。



    容易に侵入を許さない鋭い剣の山で、玉座にふんぞり返るわけでもなく、ただただ自分たちを慕ってくれる者たちを慈しみ大地を愛で、穏やかに暮らしておりました。



    しかしつがいの蛇王龍にも、悩みの種というものはありました。




    夫婦となり気が遠くなるほどの年月を生きてきた二匹には、子がいなかったのです。



    たがいを深く愛しあっていた二匹は、いつまでたっても我が子の顔を見ることが叶わなかったのです。



    そのことをひどく悲しんだ二匹の蛇王龍は、来る日も来る日も暗く落ち込んで、いつかのように穏やかに微笑むこともなくなりました。


    ある時、つがいの蛇王龍は異変に気付きました。


    妻である蛇王龍が、下腹部に痛みを覚えたのです。


    もしや、と二匹はその日から積極的に下腹部に話しかけました。


    しかしいつまでたっても妻である蛇王龍の腹は膨らみませんでした。日に日に痛みは増してくるものの、下腹部は膨らまなかったのです。



    ああだめだったのかと、ついに二匹が諦めようとした頃でした。妻の下腹部に今までにはないような激痛が走り、そしてなんと、たまごを産み落としたのです。


    つがいの蛇王龍の巨躯からは想像もできないような、小さな小さなたまごでした。


    つがいの蛇王龍はそれはもう喜びました。薄く光るたまごの殻を、割らないよう傷つけぬよう、殊更優しく撫で、愛おしみました。



    愛おしみ、そして更に月日は流れました。


    未だ、たまごはかたりとも動きません。



    それでも、つがいの蛇王龍はたまごを愛することをやめませんでした。











    かたり。

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