蛭湖の妙な噂編 2/18
「葵、相談があるのだが…」

午前6時30分頃の事だ。
葵はいつも通り弁当を3人分と朝食を作る為に朝早くから台所に立っている。
気分が良さそうに目玉焼きを焼く葵の背後から朝食待ちの蛭湖が深刻そうな顔で話を切り出した。

「何?目玉焼きの焼き加減は硬めにして欲しいんだっけ?」
「いや、硬めにして欲しいのはゆで卵…じゃなくてだな。」

「いい加減外付けの鍵を掛けるのは止めないか?」
「何でさ」

ここに住居を構えて以来、煉華が何処かに行かない様、外付けの鍵を掛けるようにしていた。炎術師としての才能が無くなったとは言え、葵同様紅麗のクローンだ。その気になれば外に出られてしまうくらいの力は依然として持っている。今の所煉華は部屋に篭ってテレビを見られればそれで言い様だった。

「女子高生2人をタダ働きさせてるだの軟禁してるだのの妙な噂が流れて困る。」
「えぇ?そんな噂流れてるの?」
「先程ゴミ捨てから戻る途中、挨拶を交わした近所の主婦同士の会話が背後から微かに聞こえて来てだな。」

「最近越してきた蛭湖さん?素敵よねえ」「でも一緒に住んでいる女の子2人はただの親戚らしいわよ」「葵ちゃんと…煉華ちゃん?だっけ?」「葵ちゃんの方はバイト生活しながら毎日家事やってるみたいだけど…煉華ちゃんの方はさっぱり…」「そう言えばあの家、煉華ちゃん出られないように鍵掛けていたような」「やだっ、それって監禁?」

「余りにも典型的すぎて笑っちゃうんだけど。」
「笑い事じゃない。その内お前達2人にも危害が加わって警察沙汰になるぞ。」
「大丈夫、その時は『女子高生のイメージプレイをしている男子高生』と『女子高生ですらない引きこもり』を親戚に押し付けられた可哀想な社会人って事にすればいいからさ。」
「余計怪しくなっていないか…?」
「どうだろうね?」
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