
最初は関わりたくないって思った。つぎに、会いたくないのによく出くわすなあと。そのつぎには意外と義理堅くて良い奴じゃんって思って。そのまた次は、こんなゴツイのに笑うと可愛いんだあって。
「それで...?いつイイオトコだなあ≠ノなったんだよ」
「どこをどう切り取ったらそう解釈するの」
彼氏のいない友達に、彼女のいない友達を紹介した帰り道だった。別に同行するつもりもなかったけど、呼び出されたから結果でも聞いてやるかってたまたま°゚くのサ店にいたし、時間を持て余していたから応じてあげたわけで。で、付き合うのかどうなのか聞いたらこの会話だ。
「どう考えてもそーゆー話に聞こえんだろ」
「わたしは洋平のことをイイヤツだよ、って紹介しただけだよ。イイオンナだったでしょ、わたしの友達」
洋平は分かってないって言いたげな眉を作って鼻から息をもらした。妙に腹の立つ顔だ。
「意地になるのはやめろよ、俺だって嬉しかねえっつーのに」
「......なにが」
「あ?誰が他の女の子紹介しろって言ったよ。来ちまったもんはしょーがねぇから乗ったけど」
「なっ、それはアンタがクリスマスにひとりも野郎と過ごすのもうんたらで、いい女と過ごしたいって言うから...! 」
ついカッとなって眉間に皺を寄せて見上げると、真顔の洋平と目が合った。な、なによ、好きな男に別の女の子を宛がったわたしの身にもなってほしいんだけど。なんて口には出せない言い訳をしつつも狼狽えていると、洋平はふうっと白い息を吐き出してガシガシと頭をかいた。すこしバツが悪そうにつぶやく。
「......さっきの子から聞いたんだよ、俺のこと見た目と違って優しくてイイオトコだって紹介したんだろ」
ぐ、とくぐもった声が喉の奥で鳴る。え、なんで知ってんの。
「俺のこと嫌ってると思ってたんだけどよ、なんつーかそう聞くと逆じゃん。好意的に思われてるみたいでさ」
真冬だっていうのに顔面全体がホッカイロになったみたいに暑くって、顔ごと視線を逸らした。はい、そうですよ。友達の付き添いでバスケ部の応援行ってるうちになんか気になってましたよ。喧嘩ばっかりの不良で嫌悪感だらけだったのに、いつの間にか好きになってましたよ。
「思い返しゃ......ゴミ見るみたいにガンつけられてたけど最近じゃ優しくなったもんなあ」
「……わたしまだ何も言ってないんだけど」
「ついに俺も.....ゴミからいい男に――」
「言ってないってば!」
「......嬉しかったけどな、いい女にそう思われてたんだってよ」
今夜、何度目かの思考フリーズ。それに合わせて足も止まる。いや、え。いまなんて言ったんだろうこの人。聞き間違えじゃなければいい女って言った気がするけど。あれ。ちょっと待ってほしい。紹介しろなんて言ってない、とかボヤいてたけどいい女と過ごしたいとは言ってた。で、洋平基準のいい女にわたしも入ってるとしたら。ちょっと待ってそれって。
「......んだよ、急にしおらしくなって。こっちは小っ恥ずかしいこと言ってんのによ……っておい、急に走るな!止まれって!」
わたしは考えることを放棄した。肺のなかを冷えきった空気でいっぱいにすると苦しいはずなのに自然と口角があがった。ああ!胸が苦しい。追いかけてくるいい男がわたしの手を掴んだら、どうしてやろうか。うんっと思いっきりハグでもしてやる。