
「バネのこと好きなんだよね」
ふたりぶんの足跡が追いかけてくる夕陽煌めく八月の砂浜。なんてことのない、いつもの帰り道で意を決して好きな男の子に告白をした中学三年生の私。少しだけ違うのは今日で夏休みが最後ってことくらいだ。
「なん……なんだって……?」
今日これを言うつもりなんてサラサラなかったのに、バネが“お前と過ごす最後の夏だな”とか言うから思わず魔が差した。
「冗談じゃないからね、いつか言おうと思ってたし」
「にしてもお前急すぎんだろ!俺なんも用意してねぇぞ!?」
「だってバネが最後とかいうから……いま言っとかないとって思ったんだもん」
「そりゃ今年は終わりでも来年があるだろうよ」
「卒業してもいっしょにいてくれるか分からないじゃん」
「なっ!」
バネは義理堅いし友達思いだから、きっと卒業したって誘えば海だってテニスだってなんだって付き合ってくれるだろうけど、そうじゃなくて。バネの隣に並ぶ女の子は私だけがいいって思ってしまったから、誰よりも早く伝えたかったんだ。
「……ったく、いまさらドッキリとか認めねーからな!」
「え」
「あ〜〜〜〜バシッと決める予定だったんだがよ〜〜〜〜」
「……そ、そうだったの?」
最初はぎょろりと目を剥いて驚いていたのに、嬉しさを隠せないで必死な様子が愛おしくて仕方ない。告白したのはこちらなのに、どうしてそんなに顔が真っ赤なの。
もう心臓の近くがきゅーっと苦しくて、視界の端から差しこむきらきらの海面がやけに眩しくって、海風も昨日よりくすぐったくって。あー、本当に――
「黒羽春風が好き、だいすき」
いまのはちょっと声が震えたかもしれない。けれどもバネはしっかり私と目を合わせてくれた。首を縦に振って言葉を飲み込んで、それでもって間髪入れずにおもいっきり自身の頬を両手で叩いたから、静かな浜辺にばちん!っと痛そうな音が響いた。
「……っし、気合い入ったぜ」
真剣な眼差しでこちらを見据えるふたつの瞳。息を飲んで続きを待つ。……ざざん。ふたりの沈黙を波音が埋めたとき、バネは大きな身体を折りたたんで一直線に右手を差し出した。
「先に言われちまったけど、俺もお前のことが好きだ。付き合ってくれ!」
まるで漫画やドラマで見た光景に、それはそれはだらしなく口元が緩む。
もちろん、私は眼前にある手のひらを力の限り握った。
「はい、よろこんで……!」