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◎また、相手が思うか自分が思うかという考え方の変化だけではなく、万葉集での「袖を裏返して寝ると、好きな相手の夢にあらわれる」という俗信も、いずれも平安時代では「衣を裏返しに着て寝たら好きな人の夢をみる」と変化していったことがわかりました。
<万葉集>
・吾妹子に 恋ひてすべなみ 白たへの 袖かへししは 夢に見えきや
(万葉集巻十一 二八一二)
(口語訳)恋しくてどうしようもないので袖を裏返して寝ましたけど、あなたの夢に私があらわれたでしょうか。
・わが背子が 袖返す夜の 夢ならし まことも君に 逢へりしごとし
(万葉集巻十一 二八一三)
(口語訳)あなたが袖を返して寝たからに違いないでしょう。まさにあなたにお逢いしているようでしたよ。
<平安時代>
・いとせめて 恋しき時は むばたまの 夜の衣を 返してぞきる
(古今和歌集巻十二 五五四 小野小町)
(口語訳)とてもとても思いつめて恋しいときは、夜の衣を裏返しに着て寝るのだわ(そうすると恋しい人が夢にあらわれるから)。
・白露の おきてあひ見ぬ ことよりは 衣かへしつつ ねなむとぞ思ふ
(後撰和歌集巻十二 八二六 詠人不知)
意訳:夜、起きたままで恋しい人が来るのを待つようなことをするより、いっそ衣を裏返して寝ようと思うわ。
