2
「Wクラス」の文字を睨みながら、エルは教室の扉を開いた。すると、どっと騒ぎ声が外へと漏れ出す。教室にいた生徒たちは一斉にエルへと視線を集めたが、すぐに各々の会話に戻っていく。エルを、生徒のひとりとでも思ったのだろう。
エルの後ろから遅れて戻ったトントンが席につくと、近くの生徒が「教官は?」と彼へ問いかける。トントンは苦笑いを浮かべた。「あの人」といって指さしたのは教卓。隣の生徒は首を傾げた。
「―――君らは、知らないです」
エルは教官でありながらどっかりと教卓の上に腰掛け、短いスカートから覗かせた足をこれみよがしに組んだ。そしてぽつりと吐かれた言葉は、騒がしかったはずの教室を途端に静かにさせる。
「このサイファ魔導院に連れてこられた理由を。自らに枷られた使命を、命運を。……これから目にする、地獄を。君らは、なにも知らないです。当然です。なので、呑気にお喋りしている君らを、教官は責めないですよ」
エルはへらりと笑って生徒たちを一望する。どいつもこいつも、まだまだ未来ある若者たちだった。
彼らは口を閉ざしエルを見る。彼女が醸しだす言い様のない圧と、不穏を感じさせる言葉の羅列に押し黙ってしまっていたのだ。
「グルッペン、オスマン、トントン、コネシマ、シャオロン、鬱、ひとらんらん、ロボロ、エーミール、ショッピ、チーノ、以上十一名。今日からこの"Wクラス"の生徒として、がんばるですよ」
生徒たちひとりひとりの顔を確認しながら、エルは生徒名簿を閉じたまま彼らの名を上げてった。
―――心臓が、泣き出しそうな程に鈍い痛みを叫ぶ。
「そして、わたしはアニマ=エル。Wクラスの教官です。見掛けで笑うのなら笑うがいいです。しかし、この学園において最重要視されるのは"実力"。ここでは力無き者はすぐに退場させられるです。ああ、退場というのはお家にぽっと帰される、という話じゃねえですよ」
"世界からの、ロストです"