《“魔法使い”という存在は、人類の中で最も高位な存在である》

これは、私が魔法使いになって初めて言われた言葉だ。
当時の私は、突然授けられたこの能力がどれほど凄いものなのか、よくわかっていなかったし、何ならこんなファンタジーの世界が本当に存在した事に驚いていた。

まぁ、魔法協会時代の話はまた今度するとして、つまるところ私は自分が魔法使いだという事に誇りを持っている。

ーーーだから、

『HLへ派遣なんて、どうして私が!!お断りですわ!』

そう、お断りだ。

旧ニューヨーク、現ヘルサレムズロッド。
昔は、人種のサラダボウルなんてうまい言葉があったけど、今では人種どころか人外含む、多様生物のサラダボウルだ。
私が術師で研究者で、好奇心旺盛であるなら、このHL行きを快く受けただろう。
だけど、残念ながら私はそうではない。

言っちゃあなんだが、魔法の腕前はピカイチだし、HLに着いた途端昇天するほど弱くもない。
そして、自ら危険に飛び込む程スリルも求めないのだ。

「分かってくれ、ミーア。
今、この協会の中でHLで活躍出来るのは君しか居ないんだ」
『ーーえぇ、それには納得しますわ。
ですが、私だって確実に安全だとは言いきれませんわ!』

かれこれ、このやり取りは15分近く続いている。

どうして私がこんなにもHL行きを拒むのか。
ーーそれは

『それに、HLには既に血法使い有する牙狩りがいるではありませんか!
そう、その中でも……』

『「クラウス・V・ラインヘルツ」』

私が今、最も苦手とする人物であり、数年前、思春期真っ只中の頃に思いを寄せていた人物である。
まぁ、その淡い淡い恋心はある晩、一瞬で砕け散ったのだけど。

「ミーアよ、これはそのラインヘルツから直々の依頼なのだ。
どこから漏れたのか、君のその力が牙狩りにバレてしまっている。
勿論、我々も断り続けてるのだ。
君のその力は特別であり、唯一無二のもの。そう易々とHLへ向かわせ、君を死なせるような事があればーーー。」

『なんですって?
今、ラインヘルツ様直々とおっしゃいました?ーーそれは本当ですの?』

耳を疑いたい言葉だった。
まさか、あの、クラウス様が?
いやいや、そんな筈無い。
それにあの能力がバレている?何故?

私は俯き考えた。

「どこから漏れたのかはわからない。
だが、あちらにバレているという事は、もしかすると異界側にも情報が漏れている可能性もあるのだ。
そうなれば、わかるな?ーーミーア」

その問いかけに、私の返すべき言葉は一つしか残っていないのだ。

『ーーっ、わかりましたわ。
英国魔法魔術協会異界対策局高度情報課所属、ミーア・A・ベルローズ。
その任お受け致しますわ!』

こうやって、私のHL行きは決定したのだ。

「ミーア、死ぬで無いぞ。
いくら牙狩りとはいえ、隙を見せるで無い。
我々魔法使いは、人類の中で最も高位な存在であり、とりわけ君は唯一無二なのだ…」

『わかってますわ。
それに、私がそう易々と死ぬわけありませんわ』

パチンと指を鳴らせば、4日後の日付が印字された航空券が空中に現れる。
私はそれをキャッチして、やや早足で部屋を出た。



ACT01, End up going to HL