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■ 好き嫌いを知りたい🍳くんと隠す女の子の攻防戦
「どうかな?」伺うようにこちらを見た空のような青い瞳はもう見慣れてしまった。「今日もとっても美味しいよ」ナイフとフォークを手にしたまま、彼の言葉に頷くと、彼、サンジくんは「そっか」と微笑んだ。サンジくんは毎日決まってわたしにだけ料理の感想を問い掛ける。それに対して嘘をついたことはないし、取り繕う言葉を返したこともなかった。彼が作る料理が美味しくないわけがない。料理の腕に自信と誇りを持つ彼こそが一番理解しているだろうに、いったい何を気にしているのか、わたしには皆目検討がつかなかった。
「そんなに気になるなら本人に訊けばいいじゃない」
今朝の新聞を片手にわたしを横目に見てそう言ったナミに、思わず唸り声をあげてしまう。
「そんなの、ずっと前に聞いたよ…」
サンジくんはどうしてわたしに感想を聞くの?って。それはもう包み隠さずストレートに訊ねたことがある。だって別にわたしにとってみれば後ろめたいことでも何でもないし、だけどサンジくんはその問いかけに困ったように「ダメかい?」と聞き返した。「だめなわけじゃないけど…」そう言われてしまうと、これ以上追求できなくなってしまう。結局その話はそこで終わって、そのままになってしまっている。サンジくんのことだから、強く迫れば教えてくれるのだろうが、そうまでして聞き出すのはなんだか違う気がして、こうして有耶無耶になったままだった。
「いーじゃない、別に。たいして困ってないくせに」
ナミの言う通りだ。それに対して何かに支障を来すほど混迷しているわけでは、決してない。

(サンジくん目線)
「食べれないものとか、苦手なものってある?」彼女が船に乗ったばかりの頃、首を傾げて訊いてみれば、彼女は何か考え込むように一拍置いて、ニッコリ笑った。「ううん、無いよ」嘘だな、と思った。直感的に。彼女の嘘を追求する気なんて更々無いし、必要も無い。だけど、気になってしまった。最初はそんな些細な好奇心だった。