「珍しいね、爆睡だったじゃん、」

俺の意識は遥か遠くから聞こえた声によって浮上した。いつの間にか伏せていたらしい顔をあげると、目の前に声の主が怪訝そうな顔をして立っている。あたりを見渡すと、今日は欠席一つなかったはずのクラスには疎らにしか人がいなかった。

「何かあったの?朝からずっと寝るなんて」

時計を見ると、針は休み時間に入ったばかりの時間を差している。…この時間ということはつまり、俺は二時間も寝潰してしまったということか。俺は訳を問うてくる名前の顔を見ずに言った。

「いや、別に何って程のことじゃねえよ。」
「……にしても何かあるってことじゃん。」

話くらいなら聞くけど、と彼女は俺の前の席に座る。

「ただ昨日あまり寝てねえだけだ。何でもねえ。」
「それがまずおかしいじゃん。いつも体調管理完璧な景吾が寝ないなんて。」
「たまにはそういう日もあんだよ。」
「…寝なかったんじゃないでしょ、寝られなかったんじゃない?」

その言葉に対してすぐに切り返せない。目の前で意を得たりという表情をした名前はふいに此方に手を伸ばす。

「ほら、やっぱり。…どしたの、なんかあった?」

咄嗟のことで避けられなかった俺の頭に彼女の手が乗った。ゆっくり動く手の暖かさに、俺は目を細めた。…ああ、また眠くなってきた。

「…まだ寝る?次の授業始まる直前に起こすから、寝ててもいいよ?」
「ああ…頼む」

起きたら話を聞いてもらおうと思ってしまうほどに、俺はいつも彼女に頼り、甘えてしまう。

今日も、また。

いいよ、と呟いた彼女の声を聞きながら、俺はまた目を閉じた。

授業中の居眠り 跡部の場合・end

 




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