※現パロ、新婚夫婦設定
 ゴールデンウイーク夢







「海に行きましょう、兼続さん!」


 名前がそう言ったのが、運のツキだった。
時は連休最終日で、Uターンラッシュ真っ只中。……案の定、海で潮干狩りを楽しんだ私達は帰りの高速道路の渋滞にずっぽりとはまってしまった。車は少しずつしか動かず、カーナビの目的地到着予想時刻はどんどん遅くなる。


「兼続さん、飽きたー。」

「そんなこと言われても私はどうしようもないのだが。」


 ハンドルを握り、前後左右を見る以外にはろくなことが出来ない私の身にもなって欲しいものだ、と思ったが、愛しい彼女の眠そうな横顔を見たらそんな不満もどこへやら。


「名前、眠いのか?」

「うーん…疲れたの。かなり本気出したしねー。」


先程の潮干狩りで、名前は潮干狩り場指定の網の目がはちきれそうな程あさりを探し出して詰め込み、遂には私の網に目を付け、満杯になったあさり達をうまく詰め直し、「兼続さんの網、まだたくさん入るじゃん!」と私を怒った。彼女が倹約家であるということは知っていたが、ここまでとは予想外だった。


「はは、名前のおかげで大漁だからな。……ところで、私はあさりの調理方法にはあまり詳しくはないのだが、味噌汁と酒蒸し以外に何かあるのか?」

「そうだなぁ……炊き込み御飯にしたり…ボンゴレスパゲティとか……あとはクラムチャウダー?」

「意外にたくさんあるな。」

「ネットで調べるともっと出て来ると思うよ。……でも、クラムチャウダー作るなら、あさりを剥き身にするの手伝ってね。凄く面倒くさいから。」

「ああ、勿論だ。……だがその前に、まず帰ったらあさりの砂抜きをしなくてはいけないのではないか?」

「ああーそうだった…。帰ったら帰ったでまた大変だ……」

「そうだな。……それまで寝ておいたらどうだ?当分渋滞から抜けられそうにないからな。」

「……うん、ありがとう。そうさせてもらうね。――」


そう言って小さく欠伸をした名前は目を閉じる前に譫言のように呟く。


「――……私が運転代わってあげられたら、兼続さんも楽なのにね………」


「え?」と私が聞き返し彼女の方を見た時には、早くも彼女は寝息をたてていた。

車はまだ止まっている。私は手を伸ばして名前の髪を少し梳いた後、オーディオの音量を下げた。




――恐らく、今の言葉は私を気遣って言った言葉だろうが、名前が運転免許を取ろうしても、私は彼女に反対するだろう。


(渋滞に退屈した寝顔を見るのは、私だけの特権なのだからな。)




未だ車が動かないのをいいことに、私は身を乗り出して名前の頬に口付けた。



三十粁一時間半

※粁…キロメートル


end

 




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