外の世界

パーティードレスを取りに来た。
家政婦さんがいるから綺麗だけど相変わらず寒い家。

「あら、来てたの。」

「もしかして娘さん?可愛いね。」

「ちょっと、私は?」

「響華さんが一番に決まってるでしょ。」

元女優の母とその若い愛人。
娘の前で堂々とじゃれ合う2人に吐き気がする。
どうせ次に会う時には違う男になってるくせに。

「あたし今日、白のドレスだから。
被らないようにしてよ。」

『おかえり』の一言すら聞こえないこの家はただのハリボテだ。
外に何人も愛人がいる政治家の父も
若い男を摘まんでは捨てる母も
偽り着飾る事しかできない病気だ。

「希響、こちらは箱ノ浦先生のご子息だ。」

「初めまして、娘の希響と申します。」

「徠殿[ライデン]です。
お母様に似てとても美しい娘さんですね。」

「お世辞がお上手なのね。
私は女優を引退しましたし、もう綺麗じゃないからなんだか申し訳ないわ。」

「いつも私を支えてくれる自慢の妻だよ。
あの頃と変わらず美しい完璧なね。」

「本当に仲がよろしいんですね、羨ましいです。
僕もお2人のように幸せな家庭を築けるよう頑張らないと。」

淡いイエローのドレスを身に纏って笑う私も病気だ。
家族でどうしようもないところが似てしまった。

「はぁ…。」

挨拶回りが終わった。
父がパーティーに出席する時は絶対参加。
家族が揃ってると見栄えがいいからだ。
ハリボテの家を護る為に偽りの家族を演じる
唯一与えられた娘としての仕事。

『〜♪』

「はい。」

『希響?早くおいで〜♪
帝統が勝ったからご馳走してくれるって!』

「うん、わかった、すぐ行く。」

小さい時からずっと逃げたかった。
何もない家から出たかった。
それなのに実行には移せなかった。

でも、たった一言で過去に変わる。

「希響どこ行くの?」

「安いお肉を食べに。」

「ちょっと!希響!」

『行ってらっしゃい』も聞いた事のない家だった。
憧れはいつの間にか消えて無に変わった。
くだらない茶番に若い女の匂い
馬鹿な男の笑い声に笑顔の仮面
それらに嫌悪感が生まれ、憎しみが育った。
だから私はそんな家から逃げたかった。
逃げ出した先がまた嘘に呑まれても
今は走る事を止められない。

「あ、希響ドレス着てる〜可愛い!」

「シンデレラみたいですね。
靴は落としていませんか?」

「お!姫にもたらふく肉食わせてやっからな!」

騙されても楽しい思い出があるならまだ救われる。

19.10.07
23.08.14 最終編集