伸びた背筋

『トントン』

「月読命です。
入りますねー………痴漢?」

部屋に入ると独歩くんが女の子の胸に顔を埋めていた。
どんな経緯や理由があるかはわからないけれどアクシデントなのはわかる。
そこにいる全員が唖然とした顔で時を止めていた。

「きゃーーーーっ!!」

『パチンッ!!!!』

一「独歩くん!」

とても綺麗な平手打ちが独歩くんの頬にヒットした。





…あれ?

「あっ!観音坂さん!
私ったらごめんなさい!痛いですよね!
あー本当にごめんさい!わざとじゃないんです!
あの、ほんと!えっと、え?あ!あー!」

わたわたする女の子が私の顔を見てさらに慌てだした。
多分もうキャパオーバーしてる。

「うん、とりあえずみんな座ってお茶しよ?」

たくさん貰ったういろうがいい役目を担ってくれた。
先生のとこにはいいお茶があるし相性もいい。
全員で一息つくその光景はちょっと可笑しいけれど
改めて謝り合う独歩くん達は冷静さを取り戻していた。

寂「彼女は私達のサポートをしてくれる月読命詩央莉くんで
こちらは左馬刻くんのチームの夜咲夏楠だよ。」

「まさかまた会えるとは思ってなかった!
私の事は好きに呼んでね。」

「ありがとうございます。
私もこんな再会になるとは…お見苦しいところをお見せしてしまって本当に申し訳ありません。」

独「俺もお騒がせ致しました。」

「夏楠ちゃんが許してるならいいんじゃない?
私はちょっとびっくりしたぐらいだし。」

言葉が悪かったみたい。
ただでさえしゅんと萎んでる2人がさらに小さくなった。

一「僕だけ夏楠ちゃんと初対面だなんてちょっと寂しいなぁ。
けど僕達は始まったばかりだもんね。
これから2人で思い出を作っていこうね。」

「独歩くんはともかく、
一二三くんはホストをしてるけど嫌な事はしないよ。安心してね。」

「はい。」

独「ともかくってまぁそうだよな俺なんて痴漢に間違われて当たり前だしこんなおっさん害でしかないよなほんとなんで俺なんかが息してるんだろう一二三の事だってちゃんと説明しておけば…」

ネガティブモードに入った独歩くんの隣でまた不安そうな顔をし出す夏楠ちゃん。

一「独歩くん、そんな落ち込まなくてもいいんだ。
君は男気もあって優しさもあるナイスガイなんだから。」

寂「ふっ、楽しいね。」

…カオスだな。

「左馬刻は元気にしてる?」

「詩央莉さんも左馬刻さんの事知ってるんですか?」

「うん、割りと古い付き合いになるかな。」

寂「詩央莉くんも左馬刻くんとのチームの一員だったんだ。」

先生から会ってほしい女の子がいると言われて来たけど
ナゴヤに行った時に会った子だなんて思わなかった。
しかも独歩くんとも顔見知りとか世間狭すぎ。
ラップバトルにおける切っても切れない腐った糸も見えた気がする。

「サポーターは今回が初めて?」

「お恥ずかしながら…。」

「恥ずかしい事は何もないよ。
でもわからない事があったらいつでも連絡して。
一応これ、私の携帯の番号と店の地図。」

一「詩央莉ちゃんはシンジュクでバーを営んでるんだよ。」

「へー!行ってみたいです!」

「いつでもおいで。」

左馬刻と銃兎さんが認めた子だから実力は確か。
これから待ってる中央区でのバトルがちょっと怖いな。
左馬刻が簡単に倒れるとも思わないし一郎や乱数もいる。
他のチームだって大人しくしててはくれないだろうし
やると決めたからには正面からぶつかってやる。
私も簡単に倒れるつもりはない。

「今日はお邪魔しちゃってすみませんでした。」

寂「私が呼んだんだから夏楠が気を揉む必要はないよ。」

「左馬刻と銃兎さんによろしく。」

「銃兎さんともお知り合いなんですね!」

「まぁね、その内ヨコハマに遊びに行くからその時は遊ぼうね。」

「是非!お待ちしてます。」

一二三くんの出勤時間が近くなりお茶会はお開き。
夏楠ちゃんにういろうを持たせてお見送り。

一「僕のお店にも遊びに来てほしいな。」

独「一二三、お前ほんといい加減にしろよ?」

「独歩さん、本当にいろいろとありがとうございました。
あの、叩いちゃってごめんなさい。」

独「いや、俺の方こそごめんなさい。
今度何かお詫びしますから。」

寂雷「帰り、気を付けるんだよ。」

「はい。」

「またね。」

なんだか可愛い妹が増えたみたい。
千蘭にも会わせておきたいな。

19.10.17
23.08.22 最終編集