生まれ続ける絶望
一「あ、いきなりすんません、一郎っす。」
乱「出た?詩央莉おねぇさぁぁぁん!僕もいるよぉ!」
一「あ、はい、乱数がこっち来てて。」
一郎くんのとこに来たのはいいけど
挨拶だけして電話かけ始めちゃうし、お土産も渡せずまだ私の手にある。
「あの、これ乱数からなんですけど…。」
千「え?あ、ありがとうございます!」
千蘭ちゃんは意識がどっか行ってたみたいだけど深々と頭を下げて受け取ってくれた。
乱数に彫り師をしてるって聞いてたからもっと態度悪いと思ってた。
一郎くんもそうだけど上辺だけの大人より礼儀正しくてしっかりしてる。
千「希響さんは詩央莉さんとお知り合いですか?」
「見かけた事ぐらいしかないです。
以前一郎くんや乱数を取材した関係で…
あ、私フリーのライターをしてます。名刺です。」
千「あ、すいません、私名刺持ってなくて。」
「構いませんよ。
乱数から彫り師をされてると聞いてます。」
乱数達を取材した時は会社に入っていたけどそれらの記事が原因でいろいろ危なかった。
もし問題を起こしたのが私だったらと考えると震える。
乱数のチームに誘われた時だって正直通告だと思った。
『オマエハ ニゲラレナイ』ってね。
千「政治家のご令嬢には縁がないものですよね。
住む世界が違いm…あ、今のは別に嫌みとかではないです。」
「大丈夫ですよ。
と言うより、私も彫り師を生業にされてる方は
もっと横暴な態度を取られるものなのかなと思ってました。
お互い様ですね。」
千「そうですよね。イケブクロはヤンチャする奴らが多いですし。
一郎が目を配ってるおかげで大きな事件はないですけど喧嘩ならしょっちゅう、」
?「だから二郎はいつまで経っても低脳なんだよ!
これだから馬鹿と話すのは疲れる。」
?「んだとちょっと勉強がてきるからって調子にのりやがって!
俺があそこで声かけなきゃ今頃お前はアイツらにボコボコにされてたんだぞ?
少しは感謝しろ!」
千「ほら、毎日飽きずに喧嘩する馬鹿が2人。」
大きな声で言い合いをしてるのは一郎くんの弟くん達だった。
声が近づいてくるに連れて本当に治安が悪い場所なんだなと思ってたけど
ただのじゃれ合いだとわかってほっとする。
一「お前ら何してるんだ。
お客さんが来てるんだぞ。」
三「すいませんいち兄。」
二「ごめん兄ちゃん。」
乱「うっわー!一郎の弟可愛い! 」
出迎えで優しく叱る一郎くんと素直に謝る弟くん達は教師と生徒に見えた。
そこに乱数の突撃が加わってまた騒がしくなる。
「兄弟、仲いいんですね。」
千「そうですね、煩いですけど。」
「私は一人っ子なのでちょっと羨ましいです。」
千「一郎達はいるけど私も一人っ子なんで気持ちわかります。
あそこには入れないなって思いますから。」
「ですね。」
無い物ねだりなのかもしれない。
いや、もしかしたら持ってるけど気づいてないのかもしれない。
でも欲しいと思ってしまうのはきっとそれがあたたかいと知っているから。
19.11.07
23.08.22 最終編集