此方側で生きてやる


ハンター試験2

+『ハンター試験1』の続き



+第二次試験開始までの待機時間
木の根元に寄りかかりながら虚空を見つめるイルミ(ギタラクル)に、ななしは背後から近寄った。
「イル_」
ななしが名前を言い終わる前に、イルミはななしに向かって針を構えた。
「言ったよね?オレ」
「…。申し訳ありません」
“試験中はオレの名を呼ぶな。”
ななしはイルミから受けた命令を思い出した。
「ま、いいよ、別に。ここ周りに人いないし。これきりだよ」
「はい。ギ、ギタラクル…さま」
「あのさ、わざわざ偽名に敬称とかいらないから。ていうか何?キミ、そんなに口下手だったっけ?」
「なんというか、その」
口ごもるななしを見て、イルミはやれやれと両手を上げた。
「ななしのことだから、どうせオレを偽名で呼ぶことに抵抗があるんだろ?」
「はい。とても」
「ななしらしいね。そういうところ、気に入ってるよ」
「?ありがとうございます」
「ななしはオレがオレだってこと、分かっていればそれでいい」
「…はあ」
「つまり、別に無理に偽名で呼ばなくてもいいってこと」
「ではなんとお呼びすれば…」
「お好きなように」
「では、イル_」
「ななしってそんなにバカだった?」



+最終的に、周りに人がいる時は声をかけないため呼び名を考える必要がないという結論に至った。
「ところで、なにか用?」
「いくつか気になることがあります」
「あー、ななし。キルに会ったね?」
唐突に心の中を見抜かれたような気がして、ななしはドキリとした。
「会った、と言うよりは、後ろ姿を見かけただけですが」
「まあななしをキルに会わせたことがあるのはたったの一回きりだし、それも随分前。知らなくて当然か」
「?」
「実はねキル、つい最近ミルと母さんを刺して家出したんだよ。もちろんオレがハンター試験を受けようとしたのは仕事のためで、まさかこんなところでキルを見つけるとは思わなかったんだけど」
「なるほど、家出ですか」
すると、イルミはたった今思いついたかのように人差し指を立てた。
「あ、そうだ。キルはななしの顔は知らないんだよね。丁度いいや、キルに近づいて様子見てきてよ」
「…私が?」
「うん。母さんからも様子を見てくるよう頼まれてるし、それにキルをこんなところで野放しにしておく訳にはいかないからね」
「では、主様が様子を見てくればいい話では?」
「そんなことしたらオレ、明らかに不審者だろ。ななしの方があんまり目立たないし、印象薄いし。近づくにはオレよりも都合が良い」
「(注目されてること、自覚してる…)」
「ま、とにかく、キルが今どんな感じか見てきて。くれぐれも素性を悟られないようにね。キルは少なからずななしの家のことは知ってるから」
「はい。わかりました」
イルミは、「それから」と間髪いれずに言った。

「ヒソカに会っただろ」
「…」ななしは口をつぐむ。
「見れば分かるよ。何された?」
「…見かけただけです」
「何された?」
「…」
ななしは観念して答える。
「…念を仕掛けられました」
「具体的に」
「…念で引き寄せられて、…」
「それで?」
「…腰の辺りを、抱かれました」
「へえ?」
「…」
「それだけ?」
「…はい、それだけです」
「本当に?」
「えっと、」
「信じてもいい?」
「…」
ななしはまたも観念する。
「…ヒソカに、“お願い”をしつこく要求されました」
「…お願い?」
「『ハンター試験の間、一緒に行動したい』と」
「ななしはなんて言ったの?」
「断りました。そのあと、別の受験者がヒソカに襲いかかって、その隙に逃げ出しました」
「ふーん。そっか。…」
イルミはそのまま黙り込んでしまった。
「あの、それから…多少とはいえ、ヒソカのオーラに対抗するためにほんの少しだけ念を使ってしまいました。申し訳ありません…」
「…」
「…主様?」
「…」
「(…きっと私への処罰を考えている…)」
「( なに?この前あれだけ忠告したつもりなのにアイツ ホントに何考えてんの?まさかオレが怒ってヒソカに攻撃するの期待してななしに手 出してるわけ?次に会ったら二度と口聞けなくしてやろうかな) 」



+第二次試験
試験官メンチの判断で一時は合格者ゼロとなったが、その後現れたハンター協会会長のネテロがクモワシの卵を取ることを新たな試験内容として提案した。

手に入れた卵を調理している時、ななしは背後から声をかけられた。
「ねえ、アンタ。どこかであったことある?」
そこにいたのはキルアだった。ななしは表情に出さないまま、心の中で驚いた。まさかキルアの方から声をかけてくるなんて。ななしはとぼけた。
「…君は?」
「いや、ちょっと、気にかかっただけなんだけど」
「試験中にどこかで会いました?」
「そうじゃなくて…(オレと似た気配を感じる…殺し屋か?)」
「たぶん、初対面だと思いますけど」
「…ま、オレの気のせいだったかも。突然悪かったな」
キルアはそのままななしの返事を待たずに離れていってしまった。
「…」
どこからか視線を感じる。ななしはそれに応えるように目を閉じた。



+第三次試験へ向かう飛行船の中
ななしは、端の方で毛布にくるまっているクラピカとレオリオに声をかけた。
「あの、君たち、白髪の少年と一緒にいましたよね」
「ああ、そうだが…」
顔を上げたのはクラピカだけで、どうやらレオリオの方は既に寝息を立てているようだ。
「君はたしか、一次試験の時の…」
「ななしと言います」
「ななしか。キルアに何か用か?」
「へえ。あの少年の名は、キルアと言うんですね。(すっとぼけ)」
「そういえば、先程マフタツ山でキルアに声をかけられていたな。それと何か関係があるのか?」
「よく見ていましたね。はい、それと関係があります」
「キルアに用があるなら、今もゴンと一緒にいるはずだ。同じくらいの黒髪の少年だ。見かけなかったか?」
「それが、飛行船内のどこにも見かけなくて…。君たちが目に入ったので」
その時、隣のレオリオが目を覚ました。
「んん、なんだクラピカ、お前まだ寝てなかったのか…?」
「この女性がキルアに用があるらしいんだ」
「この女性って…、」
レオリオはななしを見て仰天した。

「ああ!お前、ヒソカの女か!?」

「は?お前は何を言って」
クラピカが眉間にシワを寄せる。
「なんだ?」「ヒソカ?」「女?」
レオリオの大声は、周囲の受験者の目を引くのに十分だった。
「…(ヒソカと一緒に覚えられているなんて、なんという屈辱)」
不幸中の幸いか、この場にはヒソカもイルミ様もいないようだ。ななしは内心安堵した。口元に人差し指を添えて、レオリオを諌める。
「声が大きいですよ」
「あ、すまねぇ。ついよ」
「…君が一次試験の時に言っていた知り合いとは、まさかヒソカのことだったのか…」
「(ヒソカと知り合いとすら思われたくない私がいる…。)否定はできませんが、しかしきちんと否定しておきます」
「どういうことだ?」
「ヒソカとはただの顔見知り。ましてヒソカの女だなんて、心外にも程がありますね。あれはいつものナンパです」
クラピカとレオリオは、ヒソカからいつもナンパされてるのか…とななしのことを不憫に思った。と、同時にクラピカはななしのことを並の使い手ではないと瞬時に悟る。あの戦闘にしか興味がなさそうなヒソカが、わざわざ目にかけるくらいだからだ。
「それはそうと、私はそんな話をしに来たのではなく、キルアさ、…について聞きに来たんです」
レオリオは怪訝そうにした。
「キルア?まさかお前、ヒソカに頼まれて情報を奪いに」
「…」ななしは目を細めた。
「…ナンデモアリマセン」
クラピカは溜息をつく。
「レオリオ、君はしばらく黙っているんだ。ところで、ななし…と言ったな。キルアにいったい何の用なんだ?」
「先程、彼に以前どこかであったことがあるかと聞かれました。そのときは心当たりがなかったのですが、少し考えてみたら、なんとなく覚えがあるような気がして…なのでもう一度話を聞こうと思ったんですよ(大嘘)」
「そうか、話は分かった」
クラピカは気遣うように笑いかける。
「だが、今は試験が終わったばかりで既に日も暮れている。キルア本人もここにはいないし、悪いが明日の朝にでも出直してくれないか?」
「…それもそうですね。君たちも、お疲れのところ申し訳ありません。ではまた改めて」

「(…早くボクに観念して相手してくれないかな…それでもし殺しちゃってもイルミがいるし、ね{emj_ip_0834})」
物陰に隠れながらトランプをいじるヒソカ。人知れずくつくつと笑いを堪えた。



To be continued……


ヒソカにストーカーされたい…

2018.05.06



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