此方側で生きてやる


東西東西3

+絵本を読む夢主と、その面倒を見る芥川と、その様子を蔭から見守る樋口
+樋口「もはや親子」



+粗筋から読む私。
「芥川、この字が読めません」
「『りんご』」
「へえ、りんご。りんご食べたいです」
「此処には無い」
「むー。…では、これはなんですか?りんごの前に何か付いてます」
「『どくりんご』」
「へえ、そうですか。毒りんご食べたいです」
「やめろ」


+読める気がしなくて練習を放棄する私。
「だいたい、字を読まなくても絵を見ればおおよそのストーリーくらいなら推測できます。例えば、この頁。冠を被った王妃が鏡の前に立っていますね。なんだかとっても悪巧みしそうな顔です。何でしょうか、ええと。おそらくここの台詞は『私きれい?』です」
「的を射ているが、惜しい。『白雪姫』に口裂け女は出てこない」
「では、正解はなんですか?」
「『この世で最も美しい者は誰だ』」
「芥川です」
「お前に聞いていない。王妃は鏡に聞いている」
「つまり自分にという事ですか?残念な女性ですね」
「否、魔法の鏡だ」
「…つまりどう云う事でしょう」
「下人は老婆を殺そうとした」
「待ってください。何の話ですか?」


+芥川が暇潰しに取り出した本に嫉妬する私。
「芥川、いつの間にその本を持ち出したんです。先程は付き合ってやると仰いましたよね、芥川。芥川、芥川、返事しないと邪魔しますよ」
「喚くな。児童書よりも俄然この文學書の方が見応えがある」
「何ですかこの突然の心変わりは。嫉妬してしまいます。芥川は私よりもその難しい本を選ぶのですか」
「ななし、僕はお前と共にあらゆる趣向を談笑し得る事を望む。お前は違うか」
「い、いえ。私ももっと芥川と色んなことをお話したいです」
「ならば今は其れを読破しろ。たったの数頁、お前ならば造作もないだろう」
「はい、芥川。判りました」
「(芥川先輩、もうななし先輩の扱い方を誰よりも心得てるよなあ…尊い…)」


+しばらくして、五十音図と辞典を交互に見ながら中盤まで読み進めた私。
「ふわ…」
小さく欠伸をして、眠そうに目を伏せるななしに気がついた芥川は、読んでいた本を閉じた。
(ここから樋口による実況も間に挟んで)
「(ななし先輩、眠そう…あんなに真剣に本読んでたもんな…こう見ると極普通の小さな女の子だ。あ、芥川先輩、本読み終わったのだろうか。って、ななし先輩の頭撫でたー!!!)」
「あ、芥川?」
「今日はここまでだな。昨夜もよく働いた。もう寝ろ」
「しかし芥川、まだ私は物語の半ばまでしか…」
「続きは明日だ。そう無理をすることはない。尚更お前は子供の体なのだ。夜更かしは体に悪い」
「…確かに、ここの処二度目の成長期を迎えているような気がしています。最近は、出会った頃よりも芥川と手を繋ぎやすくなりましたし」
「そうか」
「(ああ芥川先輩、何故未だにななし先輩の頭を撫でるのを止めないー!?!?写真を撮りたい!しかしもし芥川先輩に私の盗撮が発覚したら端末ごと塵一つ残さず消されるー!!!)」
「芥川」
「何だ」
「抱っこしてください」
「(ギャー!!!睡魔のせいで思考回路がだんだん幼くなってるななし先輩、もう、やだ、養子に来てくださいお願いします)」
「仕様がない、万歳だ」
「はい」
「(…嗚呼、もう、私めは先輩たちの部下で居られてとてもとても幸せです。いつもよりななし先輩に優しい芥川先輩優しすぎます。例えばいつもみたいに乱暴に担がないで正面からそっと抱き抱えてる処とか、何ですかツンデレですか!先輩たち!尊い!)」
既に寝息をたてているななしを抱き抱えた芥川は、机の上に広がる数冊の本を横目に見て渋々口を開いた。
「おい、樋口」
「(ギクーー!?) な、も、もしかして気づいてらしたんですか…!」
「此の本を書庫まで運んでおけ。生憎、僕は両手が塞がっている」
「は、はい只今!!(普段はぞんざいに扱ってるくせにななし先輩が寝たらこうなるのかよ!ギャップ萌えやべえー!)」
樋口は指示通り本を手に取り、叫びたい衝動をなんとか抑え乍ら芥川の後に続いて歩いた。


+後日。
「(き、今日もドキドキワクワクな読書の時間が始まった…)」
「なんだかお腹が空いてきました。やっぱり食べましょうよ、毒りんご。此方のしらゆきひめも食べてますよ」
「やめろ」
「むー、毒りんご食べたいのに。あ、そうだ、樋口!」
どこからともなく登場した樋口。
「(!なんかななし先輩にもバレてる!)はい、何でしょう!」
「毒りんごを買ってきなさい」
「ど、毒りんご…?林檎は市街の何処にでも在りますが、毒は科学班に依頼しなければ…」
「宜しく」
ななしは無邪気にウインクをした。樋口は心臓を射貫かれた。芥川は溜息を吐いた。
「…樋口、毒は要らぬ。無花果を頼む」
「あ、はいっ。承知しました!」
「ええ?」
姿勢を正して返事をする樋口に、ななしは態とらしく目尻を下げた。
「樋口は私よりも芥川を優先するのですね」
「えっ」
「哀しき哀しき。君とは立場に囚われず心通わす仲であると思っていたのに、勘違いでしたか」
「なッ、そ、そんな事ありません!」
「樋口。君がどれだけ私を愛していなくても、私は君を愛していますからね。でも、樋口、私の事、嫌いにだけはならないで下さいね」
「勿論であります!!!!毒の準備も滞りなく!」

「おい、樋口。此奴の下らぬ戯言に耳を貸すな」
芥川がそう声をかけた時、既に樋口は部屋を飛び出していた。
「ふふ。可愛い子ですね。妹に欲しいくらいです」
「…理解できぬ」


Fin...?



毎度毎度思うのですが、小説の書き方と終わらせ方が分かりません。力不足を呪います。土下座。

2018.03.30



owner

平和主義者(more

thanks

BUNGO 文豪検索処 H*C