Web Clap

承太郎と花京院と一緒


「うえー、最悪」
「梅雨時期に傘を持ち歩かねえやつがいるかよ」
「今日は晴れるってアフロの天気予報士が言ってたから〜…」
「そんなファンキーな天気予報士、信用するほうが阿呆だろ」

学校の玄関先で立ち往生する私を、ニヤニヤと笑いながら承太郎は持っていた傘を自慢するように開き、お先に、と手を降りながら降りしきる雨を切り裂くように校門へと向かっていった。
ムカつく!本当に帰ることないじゃん!図体に合わせた大きい傘持ってるんだから入れてくれてもいいじゃん!と頬を膨らませていると、通りかかった花京院が苦笑いをしながら近付いてきた。

「その反応で何があったのか察したよ…僕の傘でよければ、入るかい?」
「え、いいの?」

どうぞ、という花京院に甘えて傘に入れてもらう。屋根の下から出ると、雨が傘を叩く音がリズミカルに響いた。花京院は私の方に少し傘を傾け、濡れないようにしてくれている。それがなんだか申し訳ない。

「ねえ、花京院の肩濡れちゃうよ? 私は肩ぐらい濡れても平気だし、傾けなくてもいいよ」
「うーん、そうはいかないよ。……ああ、そうだ」

花京院は私の肩を引き寄せて身体を近付けた。た、確かにお互い肩は濡れずにすむけども!

「いやー流石にこれは恥ずかしいな〜…」
「仕方ないさ。傘を持ってこなかった自分への罰だと思うんだね」

少し意地悪そうに笑う花京院に、少しどきりとした。…普段大人びてる花京院も、こんな表情を見せるんだな。そう思った途端に恥ずかしさに身体が支配された。顔が、耳が、熱い。私は咄嗟に顔を反らした。

「もしかして照れているのかい?……ふふ、可愛いな」
「そ、そんなこと……?!」
「耳、真っ赤だよ」

そう言った花京院は私の耳に息を吹きかけた。いきなりのことに身体は震え、変な声も出る。余計恥ずかしくなった私は、それを誤魔化すように花京院を睨んだ。

「……何やってんだテメェら」

いつのまにか承太郎が目の前にいた。先に帰ったんじゃなかったのか、と顔を見やるといつも以上にムスッとした表情で、何か怒っているな、と察するには充分だった。
承太郎は花京院の手を私の肩から剥がし、逆の肩を抱いて引き寄せた。承太郎のその強引さで、さっきまで感じていた恥ずかしさはどこかへ消えていった。

「…悪ィな、ここまで連れてきてもらってよ」
「…彼女が可愛いからって意地悪するのも大概にね、承太郎。隙を見せたら僕がどうするか…分かるだろう?」
「花京院、お前……中々いい性格してるじゃあねえか」

睨み合う二人。じっとりとした空気は、雨のせいだけではないようだ。私達の関係を表すように校庭の泥濘は少しずつ広がっていくのだった。




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